ユヴォルで10のお題

□2・ネグリジェ
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ネグリジェ







ひらひらとしたネグリジェを着ながらも堂々としている。

ヴォルフラムはなぜかこういう格好も似合うから不思議だ。

そして、当たり前のようにおれをまっすぐ見て言った。

「ユーリ、これを着るんだ」

…。

ヴォルフラムの言った『これ』とは、もしかしてヴォルフラムが両手でひらりと
ぶら下げて広げているネグリジェのことか?

「な、なんで?」

「なんでもなにも、貴族が夜着るものといえばこの眞魔国ではこういう形の夜着と
相場が決まっているのだ」

ソウデスカ。

「でも嫌だっ」

ヴォルフラムは持っていたネグリジェをおれにあてると、うんうんとうなずいた。

「どうしてだ?大丈夫だ、ユーリならきっとよく似合うぞ」

おれは絶対似合わない自信がある。

いや、似合わない以前の問題だ。

「俺が育ったところではこういうのは新婚の奥さんしか着ない」

「……」

間違った情報だっただろうか。

「しかし、ここでは…そう、兄上だってネグリジェを着ているんだぞ?おなかにポケット
がついていて、そこにグレタが入っていると聞いたぞ!」

それはまたそれでまったく別の問題がないかな。

新しい笑撃の事実におれががくっとうなだれていると、ヴォルフラムは思い出した
ように箪笥を開けた。

「それとも白はやはり気に入らないか?お前の好きな青色もあるし、華やかなピンクも
あるぞ。そうだ、やはりお前にはこれか。黒!」

ひらりと取り出された黒いネグリジェの重々しさにおれはため息を思い切りついた。

「なんで夜寝る時までそんな重苦しい色を着なきゃならないんだ」

「綺麗じゃないか。髪と目の色に映えて」

「もーわかった。白なら着るから。黒やピンクは勘弁して」

おれはネグリジェをヴォルフラムから受け取ると、パジャマからそれに着替えた。

まさかここへきて女装する羽目になるとは。

足元がすかすかする。

「腹が冷えて風邪ひいたら責任とって看病してくれよ、ヴォルフ」

「それくらいで風邪をひくとは、鍛え方の足りないやつだな」

さあ、決着もついたし、寝ようということになって、おれたちはベッドに落ち着く。

二人でベッドに座り込んで二人とも動きを止め、暫し沈黙になった。

ヴォルフラムの着ているひらひらと、自分の着ているひらひらの裾が目に入った。

今まであまり意識しないようにしてたけど。

これってちょっと裾をつまんで持ち上げたらすぐ下着があって、そこは大事なところで。

いや何が言いたいのかって、これって脱がなくても着たままでコトがいたせちゃうん
じゃないのかな?!

大人な意味でのコスプレってやつ?!(ちょっと違う)

うわあああ、ちょっと16歳には刺激が強すぎます!

昼間忙しかったから疲れて眠かったはずなのに、おれは眠気がどこかへ行ってしまった。

「ユーリ?寝ないのか?」

ヴォルフラムがおれの顔を覗き込んできた。

金色の睫毛に縁どられた湖底の碧い瞳…ああ、いい表現が見つからないけどとにかく
近くで見ると息をのむほど綺麗なんだよな…。

おれはドキドキとやかましく鳴りはじめた心臓を押さえてヴォルフラムにちょっと見惚れた。

「ユーリ?どうした」

おれはヴォルフラムの両肩に両手をのばした。

「あのさ、ヴォルフラム」

「なんだ?」

「そろそろ…おれたち一線超えてみない?」

ヴォルフラムは少しその綺麗な瞳を見開くと、顔を真っ赤にして目を伏せた。

まるで夢に出て来そうな理想的な反応!

「あの、ユーリ」

「なに?」

「一つ訊くが、お前、男性同士の情交の方法を知っているのか?」

「………あ」

…。

柄にもなくヴォルフラムが必死に笑いをこらえていたりして。

いいよ、近いうちに村田にでも訊いておくから待ってろ!

って、この姿で凄んでも様にならないなあ…。



END

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