HP短編


□憎らしい君〜愛おしい君〜
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「ドラコ・・・あなたまさか・・・」
「ん?」


信じられないとでもいうような声を出す妻。
僕は抱き寄せた腕の力を弱めず返事をした。
そのあとに聞いた言葉に僕は久方ぶりに驚愕した。


「ヤキモチ妬いてるの?」
「・・・・・・・・・・・・は?」


ヤキモチだって?
僕が?誰に?


「僕が?」
「えぇ」
「誰に?」
「この子に」


この子と、妻は自身のお腹に指をさして言う。
さも可笑しそうに。
僕が・・・この子に、嫉妬??
いや、そんな馬鹿なことあってたまるか。
僕の子だぞ?
それも、愛しい愛しい妻との!
そんな大切な存在に、有ろうことかヤキモチだって?!
まさか、そんな。


「まさか」
「きっとそうよ」
「冗談だろ?」
「本当だってば」
「何を証拠に?」
「もう、信じないんだから」
「当り前だろ」


信じられるわけがない。
全く、何を言い出すかと思ったら・・・


「ねぇ、ドラコ」
「なんだよ」
「あら、すっかり拗ねちゃって」
「君がとんでもないことを言い出すから」
「ねぇ」
「この子にヤキモチなんか」
「ドラコ」
「・・・・だからなんだよ」
「あなたを愛しているから、この子も愛しているのよ」


瞬間、頭の中の靄がさぁっと消える。
・・・・・・・・・・・・・・あぁ、もう。
敵わない、本当に。
昔から目を覚まさせられる事ばかりだ。


「参ったよ、降参だ」
「また私の勝ちね」
「またしても強烈なパンチだったよ」
「あれはあなたが悪いんだから当然よ」
「今度は負けないさ」
「私だって」







少しだけ僕は君が憎らしいんだ・・・
こんなにも愛しい君が。
愛しい彼女の笑顔をたった一時でも独占している君が。
本当に少しだけ憎らしい。
きっとそれは君が産まれても変わらない。
でも、それでも君が愛しくて仕方ないのは、君が彼女との大切な存在だから。
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