HP短編


□本よりも何よりも
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「本か・・・」

「本よ」

「好きだな」

「えぇ、好きよ」

「僕よりか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」



たっぷり考えたあとにやっと出た言葉はたった一言。
いやだって・・・何を言っているの、この男は本当に。
え?『僕よりか?』って、何が?
ドラコ・マルフォイより本が好きなのかってこと?



「何を言っているのよ、マルフォイ・・・。貴方遂に頭がおかしくなったの?」



そう質問してもおかしくはないだろう。
なんといってもこんな事は今までに例がない。
本当に一体全体目の前の男に何が起こったというのだ。
そんな私の疑問も知らずにマルフォイは、またうつらうつらと話続ける。



「僕も、本は好きだが、君程ではない」

「えぇ、そうでしょうね」

「僕が・・・好きなのは・・・・、なんだと思う?」



知らないわよ、そんなもん。
純血仲間との自慢大会とか、マグルを虐めることとか?
そういえばこの人も箒に乗るの得意だったからそれとか?
そもそもなんで私こんな寝惚けた奴に付き合って話を聞いてあげているのよ。
本を読みたかっただけなのに。



「グレンジャー・・・・」

「・・・何よ」



突然目の前の男の雰囲気が変わった。
いつもとは違う声色に少したじろいだ。
・・・なにかしら、この胸騒ぎは。
逃げたい。
でも、この男の目が、声が、私を捉えている。
逃げられない、でも、次の言葉を聞きたくない。
スッと、視線が外れた。



「すきだ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・っ?!?!」



今・・・今なんて言ったのこの人。
すき・・・ですって?
私を?
あのドラコ・マルフォイが?!
信じられない・・・・。



「な、にを・・・」

「嘘でも冗談でもない、」

「嘘、でしょ?」

「だから嘘なんかじゃない。僕は、君が」



聞けない、聞きたくない!!!!
耐えられなくなった私はその場を一目散に逃げ出した。



「っ!!!グレンジャー!!!!!」

後ろから呼び止める声が聞こえた気がしたけれど、そんなことは知らない。
ただ逃げたかった。
だって、あれは誰なの?
あの人が、私を好きになるなんて、あまつさえその言葉を口にのせるなんて・・・・・とてもじゃないけれど、信じられない。
息が切れて、足が縺れ、転びそうになる。
それでも、止まることをせず走り続けた。
苦しい苦しい苦しい!!



「っ・・・はっ・・・はっはあっ・・・・」



なんで、こんなことに・・・・
ようやく止まった足は、その場でガクンと力尽き膝をついた。



「苦しい・・・・」



なんで?
走ったから?



「・・・っ!!!」



何故か溢れ出る涙を止めることも出来ないまま、その場で泣き続けた。
頭の中で、あの人の言葉とあの時の声が反響する。
                                                                             


                                                                                
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