HP短編
□不器用
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僕はその犬(?)を見て少し笑った。
彼女にも苦手なものがまだあるのだと、安心した。
元々彼女は、箒に乗るのが得意ではなかったし、閉心術が苦手であることも知ってる。
けれど、真面目で努力家の彼女だ。
それ以外のことは大抵はこなしてしまう。
ずっと羨ましかったから、安心した。
本人に言ったら怒られるだろうな。
それに、嬉しかった。
彼女が苦手なものが得意な僕が。
まるで・・・
「まるで2人で1人みたいだな・・・」
「なにが?」
「いや・・・」
「?・・・変なマルフォイ」
怪訝そうな彼女の表情に少しばかり口元が緩むがそれも仕方ない。
彼女にバレないように付けていたマフラーを付け直しながら口元を隠した。
「それにしても寒いな。そろそろ中に入ろう」
すっかり悴んだ掌を擦り合わせて、彼女へと差し出した。
そうすれば、彼女はなんの躊躇いもせずこの手を握ってくれる。
「じゃあ、紅茶入れてくれる?あなたが入れてくれるのが飲みたいの」
「勿論。君が望むなら・・・」
「ふふ。気障ね」
「あいにくと僕は紳士なんでね」
お互いに冷えた指先を温めながら、僕たちは暖かいホグワーツの中へと、ゆっくりと足を進めていった。