HP短編


□憎らしい君〜愛おしい君〜
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憎らしいきみ



少しだけ僕は君が憎らしいんだ・・・
こんなにも愛しい君が。


「ぁ・・・」
「なんだ?」


小さく声をあげた新妻。
見ると少し吃驚したようにお腹に手を当てている。
そして、その表情を幸せそうに嬉しそうに緩めた。


「今・・・動いたの」


それはもう嬉しそうに・・・
まるで・・・・


「え?」


思わず、口が「何が?」と問いそうになる。
そんな自分を叱咤した。
愚問だ。


「赤ちゃんよ」


そう、僕らの大切な・・・
愛しい妻が身篭った僕らの愛の結晶。
必然的に口角が上がっていく。


「ほ、本当か?!」


妻の傍により、最近だいぶ目立ってきたお腹に触れる。
トクントクン・・・小さく、けれど確かにそこにある生命。
うわ・・・本当にいるんだ・・・・
情けなくも思わず涙が出てしまいそうになる。
そう思っていると、す・・と妻の細い手が僕の手の上に重なる。
導かれるままに視線も妻の元へとそそがれる。
そこには嬉しそうに微笑む妻がいた。
あ・・・また・・・
最近の妻は本当に嬉しそうに、幸せそうに微笑う。
そんな妻が愛しい。
そんなふうに僕の傍で微笑ってくれるが嬉しい。
・・・・はず、なのに・・・。

チク・・・

何かが胸に刺さる様な感じ。
なんだ・・・?
なんでこんな・・・


「ドラコ?」


心配に表情を暗くする妻。
あぁ・・・愛しい。
重ねられていた手を握り返し、妻の身体を優しく引いた。
なんの抵抗も無く、抱き寄せることができた。
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