HP短編
□本よりも何よりも2
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揺れる栗色の髪を好きになったのはいつからだろうか。
己に向けられる瞳が憎しみからでなく、恋慕からであったらならと願うようになったのもいつからだろうか。
頬に肩に身体に、全てに、触れたいと思ったのは・・・・
思い出せないくらい遠い日だ。
「グレンジャー・・・」
想いを告げることなど、一生ないと思っていた。
許されないことだと。
願ってはいけないのだと。
こんな自分の一言で彼女を苦しめることなど、あってはならない。
筈だった。
『すきだ』
『な、にを・・・』
先程の告白は、本来ならばあってはならないことのはずだ。
冗談に決まっているだろう、と言わなければならないことだ。
お前如きを相手にするなど有り得ない、と・・・
今からでも追いかけて、否定しなければならないほどのことだ。
なのに何故、この足は動かない?
告げたことを後悔していないとでも?
「そうだな・・・・していない」
そう、していないんだ、僕は。
彼女を好きになった時から、ずっとずっと彼女が欲しかった。
彼女の笑顔が僕に向いてくれることを願っていた。
彼女の全てが、僕に向いてくれれば、と。
告げてしまったなら、もう戻れないならば、これからは突き進むのみ。
狡猾な僕に相応しいやり方で、彼女を手に入れてみせる。