HP短編


□my dear
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「パパぁ」
「ちちうえぇ」


聞こえるのは小さな愛しい声。
窓からもれる光に眉を寄せ、ゆっくりと目を開く。
そこから見えるのは四つのクリクリとした瞳。



「パパ!!朝よ!!」
「ちちうえ!!あさです!!!」



二つの綺麗なソプラノは、少しばかり耳に響く音量で自分の眠気を吹き飛ばす。
今日こそは心地よく目覚められそうな予感と共に起き上がろうとした・・・が・・・



「起きて・・・ってば!!!!」
「ぐえ・・・!!」



娘の全身全霊ダイブによって、その予感は見事に打ち破られた。
ほぼ毎朝のようにこのような起こされ方をされ、自分の体は果たして大丈夫なのであろうか。



「〜〜〜〜っ!!」
「あ、パパ起きた?」
「起きてるとも・・・」



一層清々しいほどあっけらかんと言う娘に怒る気にもならない。
本当に誰に似たんだか。



「ちちうえ・・・だいじょうぶですか??」



娘とは反対にそわそわと己に近づいてきた少しばかり臆病な息子に、思わず笑みがこぼれた。



「大丈夫だ、ありがとう」
「ははうえが、ごはんっていってました」
「そうか、知らせに来てくれてありがとうな」



そう言って、己に似たサラサラな髪を撫でてやると嬉しそうに頬を緩ませた。
あぁ、幸せだな。



「パパ!早く起きて!!ご飯よ!!」
「わかったわかった」
「きょうは、ホットケーキなんです」
「成程、良い匂いがする筈だな」



ぐいぐいと腕を引っ張る娘。
その姉の服の裾を掴み、姉の後ろをちょこちょこと動き回る息子。
キッチンからするであろう食欲を誘う香り。
そのキッチンで自分らの為に食事を作っているだろう妻。
なんて幸せなのだろう・・・・


                                                            
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