夢幻界の物語

□ジークの章
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子供の頃の俺はとても弱かった


貴族としての教育も満足にこなせず


毎日両親を失望させていた


俺はそれが嫌で誰も来ない秘密の場所で鍛錬をしていたが


何1つ成果は上がらなかった


だがそんな時だ


シルバー様に出会ったのは




ジークの章




カンッ!
カンッ!
カンッ!


深い森の奥で、1人の子供が剣を振り回していた。その子供は紅蓮の髪に綺麗な翡翠色の瞳を持った少年だ。外見は7歳ぐらいに見える。

その少年の名前はジーク・ギルバート
炎のドラゴン族の貴族だ。ジークは先程から木に吊るした丸太に向かって剣を振り回している。だがジークがやっているのは重力で向かって来た丸太を押し返しているようにしか見えない。しかも時々狙いが外れている。ジークは一向に上達しない剣にイライラして、大きく振り被って丸太を押し返そうとした。だが剣は空振りして丸太がジークの頭にゴツンッ!と勢い良く当たる。


「いっってぇぇぇぇ!?」


ジークは剣を離して頭を抱えながらその場に蹲る。目からは痛みによる涙が滲んでいた。


『クスクスッ!』
「!?……だ、誰だ!」


痛みに耐えるジークの耳に、誰かが笑う声が聞こえた。ジークは自分以外の誰かがいると知り警戒する。笑い声は尚もジークの耳に聞こえていた。


「誰だよ!出て来い!覗きなんて悪趣味だぞ!」
『クスクスッ!そんなに見られたくなかったのか?まぁ、そんな剣の腕じゃ当り前か。』
「う、うるさい!隠れてないで出て来いよ!/////」
『イヤだね。出て来いと言われて出て行く奴がいたら、そいつは余程のバカだ。』
「〜〜〜っつ!」


その人物の言葉にジークは地団駄を踏む。軽くあしらわれているのが彼には分かった。


『しっかし、飽きれる程に下手だな。基礎がまるでなってない。』
「!?………そんな事………言われなくったって………分かって………」
『お前、炎の王の息子だろ?しかも貴族だ。教育者に教えてもらってないのか?』
「…………………」
『まぁ、それは無理か。何せお前の兄に掛かりっきりだ。』
「なっ!?知って………」
『知ってるぜ?お前が誰で、どうしてそんなに弱いのか、どうして両親はお前に失望するのか、どうして誰もが兄に期待を寄せるのか、全て知ってる。何せずっとお前を見ていたからな。』
「俺を?」
『親の期待に応えようと無駄な努力をするジーク・ギルバート………だろ?』
「無駄な努力じゃない!俺が弱いから父上と母上は失望するんだ!強くなれば俺を褒めて下さる!」
『クスクスッ!』
「笑うな!」
『何も知らないんだな。いや、お前が見ていないだけか。』


姿の見えない人物はジークを馬鹿にした。

ジークにはかなり年の離れた兄がいる。その兄は強く賢く両親に期待された兄だった。ジークもそんな兄を尊敬して憧れを持ち、いつか強くなって兄を支えようとこうして隠れて努力している。それを姿の見えない相手は馬鹿にしたのだ。


『ジーク、お前は自分が貴族の息子だと言う事を忘れてるぜ?』
「???」
『貴族は地位に対して誇りと執着、傲慢を持ってる。お前の兄は、お前が思ってる程素晴らしい兄じゃない。寧ろ計算高い策士だ。両親も、お前に失望してるんじゃない。初めから期待なんて持ってないんだよ。』
「そんな事はない!」
『ならオレの言った通りにしてみろ。そして冷静になって周りを見てみな。今までお前に見えていなかったモノが見えるぜ。そして、どうしてお前が弱いのかその理由も分かる。』
「…………………」
『どうする?』


それはまるで悪魔の囁きだった


当時の俺はその悪魔の囁きを聞いた


どんな人物かも分からないその相手の囁きを


だがそれで良かったと思っている


もしあの時


その悪魔の囁きを聞いていなかったら
















俺は存在すらしていなかった







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