夢幻界の物語

□ガイアの章
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シルバーと初めて会った時の事は今でも鮮明に覚えてる


サラサラとした綺麗な銀髪
光が水面を反射したかのような眩しい銀色の瞳
シミ1つない白い肌
スラリとした細い身体


一瞬天使かと思っちまった
こんなに綺麗なイキモノがいたなんて知らなかった。白い身体に付いている紅い血も、シルバーを綺麗に飾り立てる物のように感じた。
その全に魅惑された
完全な一目惚れ
俺はあの時程、城を抜け出した自分を褒めた事はなかった。




ガイアの章




夢幻界の空に浮かんでいる城は風のドラゴン族が住んでいる城
そんな幾つもの浮かんでいる城の中で一層大きな城があった。そこにはガイアが住んでいる。
その城から大きな声で怒鳴る男の声が聞こえた。


「ガイア!どうして城を抜け出した!」
「…………………」
「聞いているのか!ガイア!」


ガイアを怒鳴っているのは彼の父親だった。彼は顔を紅くして喚き散らす。だがとうのガイアは少しも堪えた様子はない。冷めた瞳で自分の父親を見ているだけだった。


「お前は自分の立場を分かっているのか!風のドラゴン族の王である私の息子なのだぞ!それなのに護衛も付けず抜け出すなど何を考えている!しかも神殿近くにある守人の湖に行くなど、私の立場を危うくするつもりか!」
「…………………」
「なんとか言ったらどうなんだ!」
「貴方、そう喚き散らすものではないわ。それよりもこの子が湖に近付いた事が知られていないか調べないと。」
「………あぁ、そうだな。ガイア!お前は部屋に行っていろ!暫くの間その部屋から出るな!」


ガイアの父親はそう言ってと妻を連れてサッサと行ってしまった。ガイアはそれを見送る事もせずに自分の部屋に行く。部屋に着くと彼はベッドに寝転がり湖での出来事を思い出した。


「(綺麗だった。あんなに綺麗なイキモノがこの夢幻界にいたなんて………)」


ガイアは溜息を吐く
野心溢れる醜い大人達に嫌気がさして、城を抜け出した彼はフラフラと宙を飛んでいた。そして1人になりたくてシルバー専用の湖に行ったのだ。理由は誰も近付かないから。
ガイアはそこで返り血を洗い流しているシルバーに会ったのだ。

初めは驚いた。誰も近付かない所だと知っていたから人が居るとは思わなかったのだ。そしてその余りにも綺麗な姿に瞳を奪われた。ジッと見詰めていると相手は此方の存在に気付き動きを止めた。お互い見詰め合う中でガイアは激しい欲望を感じたのを覚えている。


あの銀色が欲しい


それは何に置いても無関心だったガイアが初めて執着した事だった。


「(綺麗な銀色だったな。でも………)」


その色が何を示すのか知っている。己が見たのは忌み子だと
しかもただの忌み子ではない。返り血の着いた白い服が側にあった。それが意味するのは・・・


「(俺が見たのは忌み子で噂のブラッドエンジェルだ)」


それがどれ程の大事件か子供の自分でも分かっている。自分は銀色の最大の秘密を知ったのだ。

忌み子は産まれるのと同時に殺される。だが自分が見たのは青年の忌み子だ。殺される事なく生きている。それが意味するのは


「(誰かがあの銀色を助けているんだ)」


その事にガイアの胸の中がモヤモヤとした。そのモヤモヤが嫉妬と言う感情である事は今の彼は気付いていない。


「(また会いたいな……)」


ガイアは純粋に会いたいと願う。だがその日から彼が青年に成長するまで、シルバーを見る事は1度としてなかった。



時は流れガイアは青年へと成長した。彼はシルバーを見付け出すまでに色々と考えていた。
先ず力を求めた。成長して行くごとに自分は力が弱いと痛感したのだ。


コレではあの銀色を護れない


そう思ったガイアは日々鍛錬を欠かす事なく己を鍛えた。もう1度会いたいと言う純粋な想いは日毎に強くなり、今では手に入れたいと思うようになっていた。

シルバーを探す為に何日も城に帰らない日々が続いた。それが数十日、数ヶ月、数年、数十年となり、帰るたびに両親はガイアを怒鳴った。だがそんな事を気にする彼ではない。元よりガイアは両親を嫌っている。

ガイアはシルバーを探し続けた。だがどんなに探しても見付からない。ブラッドエンジェルの噂も聞かなくなった。もしかしたら誰かに見付かって殺されてしまったかもしれない。そんな考えがガイアの頭を過った。
そして諦めようかと思っていたある日の事、ガイアに運命の出会いが訪れる。それはいつものようにシルバーを探して久方ぶりに城へ帰って来た時に起こった。


「ガイア、話がある。」
「俺にはねぇよ。」
「貴様!父親に向かって何と言う口の聞き方だ!」
「うるせ〜、弱いくせに粋がるんじゃねぇ。」
「何だと!」
「貴方、怒っている場合じゃないわ。今回の催しは私達に取ってチャンスなのよ。」
「あぁ、分かっている。」
「(催しだと?)」
「いいか、ガイア。明日、守人が弟であるガーディアンの守護者を決める大会を開催される。」
「守護者?」
「ガーディアンの命を護る者の事だ。常に側にいて夢幻城を出入り出来る。お前もその大会に出るんだ。」
「冗談じゃねぇ。誰がそんな大会に出るか(俺が護りたいのはあの銀色だ)」
「ガーディアンの守護者になる為に大勢の者達が参加する。お前も出ろ。拒否する事は許さん。」


父親は言いたい事だけ伝えると妻と一緒に部屋から出て行った。


「(大勢の者達が参加するだと)」


もしかしたらその中に、あの銀色がいるかもしれない。そう思ったガイアは明日の大会に出る事にした。







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