夢幻界の物語

□シルバーの章
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闇 闇 闇


オレが最初に見たのがソレだった

気が付けば目の前には闇しか無く
オレ1人だけがその闇の中にいた
どれぐらいその闇の中にいたのかは分からない
ただ気の遠くなる時を、その闇の中で過ごしたのは確かだ
たった1人で・・・・・

初めは何をしたんだったかな?
確か、何処までこの闇が広がっているのか確かめていた
ずっと真っ直ぐ進んでいたっけ
周りは闇だから本当に真っ直ぐ進んでいるのかは疑問だったが
だが暫くすると飽きてしまった
何処を見ても闇ばかりで終わりなんてなかったから

次にしたのは自分を見る事だった
オレ1人だったから、自分の姿を見る事なんて必要ないし
でもオレは丸い光の球の姿だったから何の感情も湧かなかった
だから自分で身体を創った
普通に身体を創ろうと思ったら、どう言う訳か勝手に身体が出来ていた
コレにはマジでビックリしたぜ
自分の身体をマジマジと見ていたが、流石に顔は見れなかった
だから自分の姿を見れる鏡を出して見てみたら驚いたぜ
闇の中でもはっきりと分かる銀髪に銀瞳、整った顔立ち
コレがオレなのかと正直疑問に思った

周りは闇
その闇にいるオレはきっと闇の色をしていると思っていたんだ
それなのにオレの姿はその闇の中で消える事無く綺麗に輝いていた
その時、初めて言葉を発した


“白銀だ”


と・・・・・


闇に溶ける事無く
輝きを失う事も無く
光続ける銀の煌めき
白銀(しろがね)


その白銀がオレの真名となった
オレが自分自身で付けた真名
誰も知らない真名

身体を創った後も、暫く闇の中を漂っていた
何をする訳でもなく、ただ漂うだけ
とても退屈だった
そんな時、ふと思った


“オレは一体なんの為に産まれた”
“どうしてオレは産まれたんだ”


そんな事をずっと考えていたが
答えは出ない
オレ1人だから答えてくれる人もいない

色んな事を考えた
本当に色んな事を考えていた
でもそれも飽きてしまった
考えた物には答えが出る
でも、オレがなんの為に産まれたのか、どうして産まれたのかはどうしても答えが出なかった
何を考えてもその疑問に行ってしまう
オレは考える事に飽きてしまった

何もする事が無くてオレは思い付く限りの遊びをした
子供が1人遊びをするやつだ
ただ違うのは、オレの場合は攻撃呪文や身体を鍛えるやつだったが
今思えば良くそんな事をしていたぜ
闇の中でただ1人すごすんだ
時間も分からず、何もない所でたった1人で
普通の奴なら発狂もんだ
ソレをオレは、永い時を闇の中で過ごしていたんだ
良くやるぜ

そんな遊びにも飽きてまたオレは暇になった
暇で退屈で・・・・・
だから創った
暇を潰せる物を
退屈しないで済む物を

最初に創ったのは光の球だ
ソレを何百何千と創った
でもそれだけでは面白くないから火の球や水の球、雷の球なんて物も創ったな
そのうち幾つか大きな球まで創って遊んでいた
ぶつけたり壊したりしていたがそれも飽きてしまった


創るのは簡単だ
壊すのも簡単だ


でもオレが何かをしないと動かない
だから動く物を創った
オレが何もしなくてもソレ自身で動く物を
ソレが麒天だった
オレの血で創った物
初めて創った命ある物

麒天は従順だった
オレを第一に考え退屈させなかった
その麒天と色んな遊びをした
そんな時だ
創って放置していた光の球に異変が起こったのは

その光の球は周りの球を吸収してどんどん大きくなっていった
余りにも大きくなっていくから何処まで大きくなるか麒天と見ていたんだ
ある大きさになると球は周りの球を吸収するのを止めた
オレと麒天はその球を見た
とても大きくて球の中に入って行った

驚いたぜ
光の球の筈なのに地面や木があるんだ
水もあって上を見上げれば火の球が太陽に見えた
ソレが後の夢幻界となる、初めの姿だった

オレと麒天は夢幻界で遊んだ
走り回ったり泳いだり
そんな時を2人ですごした
でもそれだけでは面白くなくてオレは人を創った
夢幻界を創って最初に創った生命体
ソレがドラゴン族だ

オレの右手には黒いドラゴンが巻き付いた痣が、手の甲から肘の辺りまである
ソレを見て創った
1つだけでは面白くないから
炎・水・風・土・光・闇
それぞれのドラゴン族を創った
他にも様々な種族の生命体を創った

オレと麒天は夢幻界から離れて別の空間に城を創り様子を見た
面白かった
だが同時に呆れもした
そいつ等は自分と意見が合わないと争うようになったんだ
愛してるや信じていると言っているのに裏切る
人を貶めたり騙したり
時には殺しもしたりしていた
オレはソレを見ているのが楽しかった
そしてバカだと思った




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