Book〜長編〜

□たった一つだけ
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「ただいま」

あれから、拓弥は物凄いスピードで仕事を終わらせ自宅に戻る。
戻ると既に奏多が居た。

奏多は拓弥の自宅のキッチンで黒いエプロンを使い夜ご飯を作っている途中だった。

「おかえり。遅かったね」

奏多は包丁で野菜を切っていた。

「奏多〜これでも早く帰ってきたんだぞ」

甘えるように後ろから奏多を抱き締める。

「……邪魔だから退いて」

そんな拓弥を奏多は包丁を近づけて脅す。

「チェ……分かったよ」

拓弥は大人しくリビングに行こうとした。

しかし

「もうすぐ作り終わるから待ってて」


後ろ姿でどんな顔してるか分からなかったが拓弥には分かるだろう。
奏多の顔がスゴく赤かったことに。



数分後

「出来たから運んで」

「おう」

端から見たらもう夫婦だろう。
拓弥は美味しそうに食べて、それを見た奏多嬉しそうにして食べた。

食べ終わり

「今日は和食だったな」

「……拓弥が疲れてそうだから……」

「えっ……?」

「だから!拓弥が忙しそうで疲れてるみたいだから胃に良いご飯にしてみたけど……迷惑だった?」

あんだけ嫌がってたが、どれだけ拓弥を見ていたのか分かる。

「お前は〜」

「ちょ……離せよ!」

拓弥は奏多を抱き締めて離さない。

「お前はいいお嫁さんになれるな」

「俺は男だ!…………だけど」

「ん?」

「拓弥のお嫁さんにならなってあげてもいいよ」


素直じゃない奏多の言葉。
しかし、拓弥には裏の意味が分かっている。

「大丈夫だよ。ちゃんと俺が奏多をお嫁に貰ってやる」

「うん……」

奏多も拓弥に抱き着く。


「じゃあ、奏多」

拓弥は奏多をお姫様抱っこする。

「えっ……ちょっと……」


いきなり身体が浮き上がってビックリし拓弥の首に抱き着く。

「ご飯も食べたし、運動しようか」

「えっ……」

拓弥はそのまま寝室に入ろうとする。


「ちょっと明日学校だろうが!」

ジタバタしてその場から逃げるようにする。

しかし

「大丈夫。優しくするから」

拓弥は物凄い笑顔だった。


「……………………1回きりだからね」


奏多赤くなった顔を隠すように拓弥の胸元に凭れる。

「仰せのままに」

拓弥は優しい笑みを浮かべて部屋に入った。


つづく

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