誠凛TIMES
□見つけた、金色
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階段で出会ったきらきらとした金色が頭に強く残って、あれから3日が経つが千晶は自分の教室を出る度、きょろきょろと彼を探す。
―名前くらい聞いておけば良かった。
新設校で同学年しかいないため、すぐにまた会えるはず、と期待していたがなかなかそうはいかなかった。
そうしているうちに学校が休みとなる土曜日になってしまった。
スニーカーの靴紐を固く結び、千晶は立ち上がった。
「よし、お散歩行くよ!」
千晶が回りを落ち着きなくチョロチョロとしていた愛犬コハル(メスの黒いミニチュアダックスだ)に一声かけると、彼女は尻尾を千切れんばかりにぶんぶんと振った。
今日はいつもより早く起きられたため愛犬の散歩を買って出てみたのだ。最近運動不足であったため、それの解消にもなり一石二鳥だ。
外に出ると、さわやかな風とあたたかい陽射し。正しくお散歩日和である。
「んー、いい天気」
近くの大きな公園をぐるっと1周して家に帰るといういつものコース。
公園内は木々が並び、風が吹く度にざわざわと音を立てている。
リードを引っ張りぎみに短い足をせかせかと動かし進んでいくコハルが可愛く、つい笑みが溢れる。
「もー、コハルー。そんなに急がなくてもいいよー。って、あっっ!」
手からするりと抜けるリード。猛ダッシュのコハル。
「ちょ、コハル!待ってー!!」
追いかける千晶。どんどん開いていく距離。
「も、無理っ…」
千晶はヨタヨタと地面にへたりこんだ。緩いカーブの石畳を走り、コハルは消えていった。
―あぁ、さよならコハル。っていうか、ちょっとは振り向いてよ。
ゼィゼィと乱れた呼吸を整える。疲労感がどっと押し寄せる。
「ワン!」
コハルの鳴き声が聞こえた。見えなくなったため、遠くまで行ってしまったと思ったが、そうではないようだ。
千晶は立ち上がり、早足でコハルの走っていった方へ向かった。
「コハルー!っ!?」
「ワン!ワン!」
目に映ったのはコハルが背の高い男にじゃれついている光景で、
「見つけた…」
そして、じゃれつかれている男の髪は太陽の光を浴びてきらきらと金色が眩しく輝いていた。