短編
□こんちきちん
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「え、祇園祭?」
「京都に来たからには1度は見ておきたいんだ。案内頼めるかい?」
「うん。私でええんやったら」
梅雨真っ只中で身体にまとわりつくような独特の暑さにうんざりとする7月初旬。高校から京都に来たという赤司征十郎とクラスメイトで席が隣の結城琥珀の間でこんな会話が交わされていた。
琥珀は特に予定もなさそうであったため承諾した。しかし何故ただのクラスメイトである自分にこの話を振ったのかを少し疑問に思ったが、席が隣でクラスの中ではよく話す方だったので頼みやすかったのだろう、という結論に至った。
「赤司くん行けそうな日、どのあたり?山とか鉾は10日らへんから建ててあるけど…」
琥珀は手帳を開きながら赤司に問う。
祇園祭は毎年7月1日から31日の丸1ヶ月に渡り行われる。10日頃に鉾や山が建てられ、14日から16日(宵山)まで京都の大きな通である四条通が夕方から歩行者天国となり、屋台、露店が多く並ぶ。そして17日には山や鉾が曳かれる山鉾巡行がある。
「そうだな…。部活帰りでも大丈夫かい?」
「ええよ。私一旦家に帰るけど、連絡くれたら学校まで行くで。家近いし」
琥珀の手帳とにらめっこをする赤司。少し長い前髪が揺れる。
少し白い肌、整った顔立ち。
琥珀は息を飲んだ。
こんなに綺麗な男の子見たことないかも…。
「結城さん?」
「え、あっ!」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫っ!」
急に赤司に声をかけられあたふたする。どうやら琥珀は赤司に見とれていたらしい。
びっくりしたぁ。
琥珀はふぅ、と一息つく。
「じゃあ、16日の夕方でお願いするよ」
「了解」