誠凛TIMES
□きらきら金色
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「リコー、数学の課題プリントもらうねー」
「はぁ…」
「どうしたの?リコ」
大きく溜め息をつくクラスメイトの相田リコ。彼女は溜め息に続き、眉間に皺を寄せながら課題プリントを千晶に託し、話し始めた。
「男子バスケ部の監督を頼まれたの」
「男バスって、この学校にあったっけ?」「今はないけど創部に向けて、準備中みたい」
「へぇ。で、どうするの?」
「断ったわよ。でも…」
「でも?」
言葉を詰まらせたリコに千晶は首を傾げた。
「本気、見せられたら分からないかも」
「本気?」
「そう」
そう言いながらリコはシャープペンシルをクルっと回した。
リコも大変だなぁ。でも、リコの監督姿見てみたい気がする。
クラス全員分の課題プリントの山を抱え職員室へ向かう。階段をトントンとテンポよく降りる…、
はずだった。
階段を1段踏み外しグラリとバランスが崩れる。あぁ、これ絶対痛い、と身構えた。
そのとき、前方に倒れつつある千晶の身体が急に後方に引かれた。
「っ、あぶねー」
「…、痛くない」
千晶の身体は後ろから何者かに支えられ、床との衝突は免れた。
良かったぁ、と安堵した。が、
「あー!!」
どうやらバランスを崩したときにプリントから手を離してしまったようで、眼前には真っ白の絨毯が敷かれたかのようであった。
「嘘…」
無惨にも散らばったプリント。突然の出来事で思考回路はフリーズ。千晶はただただ立ちすくむことしかできなかった。
「ったく…」
「え…」
目の前で金髪の男が屈んでプリントを拾い始めた。
この人誰?、私を支えてくれたのはこの人?、金髪、不良?ぐるぐる思考は回る。
「ボサッとすんな!お前も拾え!」
「え、あ、はい」
男の一喝で考えることを一旦やめ、千晶もしゃがみこみ、2人で黙々とばらまいたプリントを回収する。
白い絨毯はあっというまになくなった。
「終わったぁー」
「ほらよ」
男はプリントの束を千晶に手渡した。
千晶は改めて男をじっと見た。少し長めの金髪、眼鏡、身長は高め。
「ありがとうございます」
「べ、別に。通りにくかっただけだよっ」
金髪の男はぺこりと会釈をする千晶にそう言って足早に去っていった。
ちなみに彼の去り際に金髪がきらきらと綺麗に見えて思わず見とれてしまったのはここだけの話だ。