短編
□Sleeping Beauty
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部活帰り、黒子はマジバーガーの2階から外を眺めていた。傍らにはここに来るといつも買っているバニラシェイク。彼の好物だ。
そこに赤い髪の少年がトレイ一杯にチーズバーガーを載せ、そのまま黒子の向かいに座った。
「あー、今日も疲れたー」
そう言いながらチーズバーガーにかじりつく。
「いつ見ても凄い量ですね。火神君」
黒子に話しかけられた火神という赤い髪の少年は、目を見開いて驚き、ゲホゲホと咳き込んでいた。どうやら黒子に気がついていなかったようだ。
「く、黒子!お前いつからそこに…」
「君が来る前からです」
「もっと存在感ってもんを出せー!」
ぎゃあぎゃあと言っている火神を尻目にマイペースにバニラシェイクを飲む。
「火神君」
ふと、黒子が切り出した。
「火神君は、自分の求めているものがすぐそばにあるのに、なかなか手にすることができないとき、どうしますか」
「なんだよ、それ」
んー、とチーズバーガーを咀嚼する火神。その姿はリスやハムスターの如し。
「突き進めばいいんじゃねーの」
火神の答えはいたってシンプルであった。
「自分が求めてるもんなんだろ?追いかけるしかねーだろ」
そんな言葉に、何だか背中を押された気がした。
―シンプルでいいんだ。
「火神君、ありがとう」
そう言った黒子の顔は晴れやかであった。
「おう」
そして火神は4個目のチーズバーガーに手をのばした。