NO MUSIC NO LIFE

□LOVE YOU NEED YOU
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ひとり教室で明日提出の課題を解きながら千晶は、黄瀬涼太を待っていた。気がつけば陽がゆっくりと落ちてきており、壁にかかっている時計を見ると、そろそろバスケ部の練習が終わるころであった。
数式を書き連ねたノートを鞄に納めていると、バタバタと足音が近づいてきた。

「センパイ!お待たせっス!」

満面の笑顔で教室のドアを開けた黄瀬は、肩で息をしながら千晶のそばに駆け寄った。部活が終わってから急いで走ってきたのだろう。

「お疲れさま。走って来たの?」
「早くセンパイに会いたくて」

問いに対して、黄瀬が端から聞いたらあまりにも恥ずかしいことをさらりと言ってのけるので、千晶はつい吹き出してしまった。
「あー、なんで笑うんスかー」

口を尖らす黄瀬に、千晶は『ごめん、ごめん』と優しく頭を撫でる。綺麗な金色の髪が夕陽を受けてきらきらしていた。


帰路を歩きながら、お互い今日の出来事を話していた。授業のこと、部活のこと…、黄瀬の部活の練習が忙しいため、帰りくらいしか一緒にいられないため、少し遠回りして歩く。
公園にさしかかり、黄瀬の提案でベンチに腰を下ろすことになった。余程、離れたくないのだろう。

「そういえば、昨日CD借りたら、めっちゃ良かったんスよ。早速iPodに入れて、朝からリピートしてるんス」

黄瀬はイヤフォンを片方だけ千晶に差し出した。彼女はそれを耳に収め、同じく片耳だけイヤフォンを着けた黄瀬が再生ボタンを押した。
流れてきたのは英語のラブソングで、サビでは男性ボーカルと女性ボーカルの掛け合いが、アップテンポながらも耳に心地よかった。

「ねぇ、涼太。これ英語だけど歌詞の意味分かる?」

千晶は足でリズムをとりながら聞いている黄瀬にふと浮かび上がった疑問を問うた。彼はスポーツ万能であるが勉学に関してはお世辞にも賢いと言える部類ではない。

黄瀬は『それ訊くんスかぁ』と頬を掻きながら苦笑いを浮かべていた。

そんな彼につられて千晶も笑った。そうしていると黄瀬の手がすっと伸び千晶の髪に触れた。


「俺の気持ちっスよ」


黄瀬は優しく微笑んで千晶を見つめた。

「まぁ、訳合ってんのかは分かんないスけどね…」


千晶から視線を外し、前髪を触りながら話している黄瀬の顔は段々紅く染まってきた。夕陽のせいなのかは分からないが。

千晶は心が暖かくなるのを感じた。『愛しい』とはこういう気持ちなのだろうか…。

「涼太、私もおんなじだよ」

千晶が声をかけると、黄瀬はさらに顔を紅くさせた。

「千晶センパイ、好きっス」

彼は、小さく呟いた。





この胸にあるのは君への溢れるほどの愛
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