モノクロ世界(内容)
□12、もう迷わない
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少女が消えてから菜緒とクロはまだAKUMAの残党が残っているかもしれない、と周辺を見回ったがそれらしき影もなく、再び元の湖の傍へと戻っていた。
とりあえず、これで任務は完了したとみて間違いはなさそうだが、辺りはもうすでに暗闇に包まれこれから森を歩いて近くの村までたどり着くのは至難の業のようだ。
「さて、どうするかね」
「お前ただでさえ方向が正確にわかってねぇのに、このまま暗闇の中歩くなんて自殺行為だぜ」
「失礼な。まぁその意見には賛成だけどね」
ゴーレムも手元にないということは連絡手段もない。
そのうち応援がくるかもしれないし、このままここで夜を明かした方がいいだろう。
そうときまればさっさと腰を下ろして休息を取った方がいいと判断し、近くの木の根元に腰を下ろした。
だいぶ寝心地は悪いが、どこでも眠れる彼女にとっては問題ない。
ごそごそとぴったりきそうな場所を探し当て、瞳を閉じてそのまま眠りにつこうとしたその時、隣でもうすでに丸くなっていたクロが首を起こした。
「どうした。AKUMAか?」
「いや…どうやら野宿は逃れられたようだな」
クロの言葉に首をかしげていると、どこからか聞きなれた言葉が聞こえてくる。
「―…!!」
だんだんとはっきりしてくるその声にもしかして、と腰を上げ、辺りを見回す。
「っ…美代!!」
「菜緒!!」
次の瞬間思ったより近くに感じた声に反射的に上を見るとそこには大きな赤い鳥の姿があった。
その大きな翼を羽ばたかせて見事に地面に着地したその大きな鳥の背中からひょこりと美代が顔をのぞかせる。
「菜緒!!無事だったんだね!!」
「美代!?なんでここに?!ってかその赤い鳥って…」
「私ですよ」
美代がその背中から降りた瞬間、鳥の大きな体が光だしみるみるうちに小さくなり、最後には白い猫へと変わっていった。
「シロ!!」
驚いている菜緒にふふんと自慢げに美代が説明する。
大きな赤い鳥の正体は朱雀といって百虎と同じく四神の一種でシロの形態変化の成果らしい。
「私たちだって伊達に修業してたわけじゃないのよ!!」
そう嬉しそうに話す美代。
そういえば元帥の元から帰ってきてもう数か月たつが、なかなか忙しかったこともあってこうやって自分たちのことを話すのははじめかもしれない。
目の前の美代はだんだんと楽しくなってきたらしく技の説明から元帥との旅の思い出、兄弟子の話までそれは楽しそうに話し続ける。
「―…でね!ティナがよけたところに元帥の…あ、ご、ごめん!つい…」
自分がずっとしゃべり続けていたことにようやく気が付いた美代が顔を真っ赤にしてうつむく。