モノクロ世界(内容)
□8、そして物語は始まった
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「…うるせぇな…」
帰還後、菜緒を医療班へと届け、コムイへの報告を済ませた帰り道。
バタバタとあわただしく走り回るファインダーと看護婦たちが神田の任務帰りでイラついていた気持ちを煽り立てた。
どうやら元凶は医務室の方らしいが、自分には関係ないとばかりに自室へと足を進める。
―こいつアウトォォォ!!―
ピタ
突然教団中に響き渡った門番の声。
その声は侵入者を知らせるものだった。
「…チッ…」
神田は未だ響き渡るその声にもう一度大きく舌打ちをすると、クルリと向きを変え、教団の正面入口へと向かうのだった。
「美代さん、大丈夫ですか?」
「は、はい!」
一方、菜緒を振り切って地下水路へとやってきた美代は今まさに任務へと赴こうとしていた。
菜緒と美代が日本語で言い合っていたのが幸いして、周りの誰も内容は聞き取れていないらしく、ほっと胸をなでおろした。
「(おもいっきり元の世界とか言っちゃったしね。危ない危ない)」
周りのことも気にせずに口走ってしまった言葉はあまりにも危険すぎる。
いつもならそういうことに鋭いはずの菜緒でさえ止まらなかった。
それだけ彼女も平常心ではなかったということ。
「(菜緒は怒っていた。急に残ると言い出したあたしに)」
でもふと気になったあの表情。
―私たちは部外者なんだ!これ以上関わったらここを歪めてしまう!わかんだろ!―
「(あれは怒っていたというより…何かにおびえていたような…)」
―こいつアウトォォォ!!―
「「「!!」」」
突然響いた門番の声に美代もファインダーも固まった。
「(Σしまった!!)」
バタバタしていてアレンのこと忘れてた!!
ど、どうしよう!!?
周りのファインダーは敵が攻め込んできたと顔が真っ青だ。
だが美代も別の意味で真っ青だ。
ここで下手に自分が出て行ってごちゃごちゃするよりも、そのまま原作通りに進めた方がいいのか、それともここで神田からの攻撃を防いであげるべきか…。
「(あたしは寄生型じゃないから大丈夫だけど…)」
時々聞こえてくるエクソシストの悲鳴には本当に心臓に悪い。
アレンもあれを受けなければならないかとおもうと心が痛む…
「(シロ!契約型でありがとう!!)」
「?」
はたから見ればどうでもいいことなのかもしれないが、美代にとっては死活問題だったのである。
あたし寄生型だったら入団断ってたかもしれないね←
『美代!聞こえる!?』
「リナリー!!」
突然通信機(ゴーレム)からリナリーの声が聞こえた。
どうやらアレンの元へ向かってほしいとのこと。
『門番の言うことに嘘はないんだろうけど、元帥のゴーレムを連れてるから確認してきてほしいの。もうすでに神田が行ってるわ』
「Σなんですと!?」
神田がもう行ってる!?
アレン生きてるかな…←
ひとまず菜緒のことは頭の隅に追いやって、門番の元へと急ぐ美代だった。
(アレン!お願い逃げて!!)