モノクロ世界(内容)
□4、条件があります
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「菜緒ちゃんは追わなくていいのかい?」
コムイに進められたコーヒーを飲みながらくつろぐ菜緒。
「いえ、他にもいろいろと聞きたいこともありますし、それにちょっとお願いがあって…」
コトリとカップを置く。
「なんだい?なるべく叶えるようにするけど…」
菜緒の表情が硬くなる。
「お話を聞く限りではその任務とやらで命を落とす危険があると考えてもいいということですよね」
菜緒の言葉にピシリと周りの空気が固まった。
原作上でもアレンの入団時はそこまで深く突っ込まれてなかったけど、任務に出るということは常に危険と隣り合わせということ。
その質問にコムイも迷ったように口を開く。
「確かに、その可能性もある。でも僕らもみすみす君たちを危険な場所へと送り込むようなことはしないよ」
それはわかっている。
探索部隊や世界各地の支部と調査を重ねての任務。
その報告によって最終的にコムイが判断してエクソシストを送り出す。
だけど、思い出すのはこの先の未来。
アレンが入団すると同時に始まるあの過酷な戦争。
それを思うとコムイの話にも首を縦に振ることはできなかった。
「私がお願いしたいのは絶対の保障」
「おい」
ぐいっと胸元を掴まれて椅子から無理矢理立たされ、菜緒の目の前に怒りをあらわにした神田の顔が現れた。
菜緒はいきなりの衝撃に驚きはしたものの、すぐにその顔は表情を無くした。
「てめェ、さっきから聞いてりゃ何を甘ったれたことを言ってやがる」
「別に甘ったれてるつもりはありません。私はここに世界を救いに来たわけじゃないんです。ただ、その目的を達成するには時間がかかります。だからそれまで絶対に死ねないんです」
「…ちっ」
どさっと乱暴に押し出され、ぼふんと再びソファへと沈み込む。
そのまま神田は振り返ることなく、部屋を後にした。
そして菜緒は気づく。
「(…Σ誰が通訳すんの!?)」
しばらく呆然としていたコムイも通訳がいなくなったことに気付くと、リーバーに何かを伝え、どこかに連絡を入れさせる。
そして通信を切ったと同時にドアが開き、そこから現れたのはラビの師であるブックマンだった。
「お初お目にかかる、菜緒嬢。我はブックマンと呼ばれる性の者。訳あって今はエクソシストをやっておる」
なるほど、ラビが日本語を理解できるとすれば、ブックマンが理解できないはずがない、と。
どうやら今ちょうど任務から帰った彼が通訳をしてくれるらしい。
「室長はお前さんの要望を飲むと言っておる。ある程度の戦闘能力が付くまでは任務には就かなくてよい。任務もなるべく単独ではつかないようにする、と言っておる」
どうやらコムイはこの条件を飲んだらしい。
別に無理矢理突っぱねられてもここから出ていけばいいだけのこと。
だって、私の居場所はここじゃない。
美代と一緒に元の世界に変えることが私の存在意義なんだから。
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」