うみのおさなご(内容)

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「お前の父親は、海賊王ゴールド・ロジャーだ!!!」

その言葉は全海軍、また全世界へと告げられた。
驚きを隠せないもの、かの男を思い出し震えるもの、反応は様々だったが、海兵たちに大きな動揺を与えたのは目に見えて明らかだった。

「ただでさえ白ひげでびびってる奴もいるのに、これは凶とでるか吉とでるか・・・」

海兵の中にまじってそう呟いた男、レム。

「なんだ怖気づいたか“ヒトクイ”よ」

言葉をかけた中将モモンガにレムはひらひらと手を振ってこたえた。

「まさか、ま、緊張はしてますよ。運命をかけた大仕事なんでね」

そんな軽口を交わしていた二人の頭上から元帥の声が響き渡る。
どうやら、海賊船がどこからともなく現れたとのこと。
突然の襲撃に前線の海兵もざわざわと騒ぎ出し、そんな彼らに向かって中将たちの怒声が飛ぶ。
だが現れたのはどれも白ひげ傘下の海賊船のみ。
本船であるモビー・ディックの姿が見えない。

「…!」

それに最初に気づいたのは処刑台の前に構える大将たちだった。

「ん?」

次第に大きくなるその音にざわついていた海兵たちも気づきだす。

「これは・・・」

「どうやらおいでなすったようだ」

にやりと笑みを浮かべたレムがスラリと刀を抜いた。
それと同時に湾内へ巨大な水柱が立ち上がる。

「モビー・ディックがきたァァアアアア!!」

姿を現したのは計四隻の鯨をかたどった海賊船。
そして、ひときわ大きい白鯨の船首に立つその姿に海兵たちがみな息をのんだ。

「グラララ、俺の愛する息子と孫娘は無事なんだろうな・・・!!!」

「白ひげ・・・」

それは中将たちでさえも例外ではない。
表に出さないものの、誰しもが自然と身体に力が入る。

「勢力で上回ろうが勝ちとタカをくくるなよ!最期を迎えるのは我々かもしれんのだ・・・あの男は・・・世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!」

元帥の言葉と同時に海軍本部を飲み込もうと襲い掛かる津波。
しかしそれは青キジの能力で津波だけでなく辺り一面が氷におおわれる。
氷によって海上の船は身動きが取れなくなるが、海賊たちは戦場から足場となった氷の上へ飛び乗り、まるでなみのように海軍へその刃を向けた。
そんな彼らを迎え撃つは海軍中将の面々。

「くっ、やはり白ひげ傘下の海賊どもだ・・・一筋縄ではいかんか・・・あ?」

次から次から押し寄せてくる海賊の波にふとモモンガが息をついた時だった、先ほどまで近くにいたはずの男の姿が見えないことに気付く

「オニグモ、“ヒトクイ”はどこにいった」

「あぁ?知らねぇな」

同じく近くにいた他の海兵たちへ尋ねるも乱戦の中その姿を見たものはいなかった。
しかし、モモンガもレムにばかり気を取られてもいられない。
リトルオーズJr.に不死鳥マルコ、ダイヤモンドジョズ。
白ひげ海賊団の総戦力を相手に海軍も中将をはじめとした最高戦力たちが相手をするも膠着状態が続いていた。

ぷるるる

「っと、モモンガさん時間みたいです」

「…テメェどこにいやがった」

戦場に響いた間抜けな電伝虫の音に視線を向ければそこには先ほどまで姿がなかったレムが何食わぬ顔で立っていた。

「どこって、必死に海賊の相手してたんですけど、それよりも時間です、引きましょう」

心外だとばかりに肩をすくめ、近くに迫っていた海賊を投げ飛ばしながら何食わぬ顔で中将たちの中に混じるレムにモモンガはああ、とだけ返事を返した。

「(あいつは、何を考えているのかさっぱりわからん・・・それに…)」

“アノ”能力は底が見えないからこそ恐ろしい・・・
おそいかかる海賊たちを無表情でいとも簡単に投げ飛ばすレムにモモンガはそこの見えない大穴をのぞき込むような言い知れぬ恐怖を感じていた。
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