うみのおさなご(内容)
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「…ん・・・」
リンが目を覚ました時、まず視界に入ってきたのは白い天井だった。
頭は靄がかかったようにぼんやりしていて何も考えることができずに、ただその白い天井をぼーっと見つめていた。
「お嬢ちゃん、目ェ覚ましたようだな」
どれくらい経っただろうか。
人の気配を感じて首を回してみればそこには白い服に身を包んだ男が立っていた。
「…?」
ぼんやりと焦点が定まっていないリンに男はまゆを寄せるとそっとリンの目を手で覆った。
「まだ解けきってないか・・・リン、ゆっくり深呼吸をしてごらん、無理はしなくていい、好きなことを思い出してみるんだ。リンの好きな食べ物はなんだい?」
「好きな食べ物・・・?・・・食べ・・・甘く、て・・・いちご・・・たると、・・・」
「そうかいそうかい、それじゃもう少し思い出してごらん。君の好きな人は誰だい?君といっしょに誰がいた?」
「だ、れ・・・?いっしょに・・・一緒・・・家族・・・かぞ・・・えー、す・・・エース・・・、エース!!!」
「おっと、まだ起きちゃだめだ」
その名前を口にした瞬間、今まで半分閉じかけていた瞳が一気に開き、ばたばたと暴れだしたリンを男が優しくなだめる。
そこでようやくリンはその男を見た。
「あなたは、あの海軍の・・・」
覚えていてくれてうれしいよ、とその男レムは答えた。
「こ、ここはどこですか!エースは、エースはどこ!!」
鋭い視線を向けられるもレムはそれを気にすることなく、ベッドの横に置いてあった電伝虫に向かって一言二言話すと、ベッドに腰掛けた。
「火拳のエースは海軍につかまってるよ。そう遠くないうちに処刑されるだろうね」
「、しょけ、い…?」
「ああ、それからここは君のために海軍本部内に作られた部屋さ」
そこまで言うとレムは血の気の引いた顔をしたリンに再び横になるよう促す。
「この部屋の中じゃ君は力は使えないし、なによりまだ本調子じゃないだろう、この人が君の世話をしてくれる人だ。何かあればこの人に言うといい」
そう言うとレムは放心状態のリンを残して一人の女性と入れ替わりに部屋を後にした。
「初めまして、あなたの世話係のフィーナです。どうぞよろしくお願いします」