うみのおさなご(内容)

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人通りの多い所へ出ると、そこには所狭しと店や屋台が並んでいた。
それをみたリンも楽しそうにあれはなに?これはなに?と聞いてくるが正直半分以上晴も見たことがないものばかりなため結局二人して店主の説明に耳を傾けることになった。




「この貝は空に浮かぶ島にあると言われている伝説の貝殻でなんと人魚の歌声が聞こえるんだ。どうだいにいちゃん今ならたったの5万ベリーぴったしだ!!」


「すごーい!人魚さんのお歌がはいってるの??」


「(そのうち魚人島に連れてってやるか)」




彼女の手のひらよりも少し大きい真っ白い貝殻を耳に当てながらはしゃぐリン。
どこへ行けども何もかもが彼女にとって初めて見るものばかりだったに違いない。
そんな彼女の様子にもっとたくさんのものを見せてあげたいと思った。
しかし、連れて行ってあげたいのはやまやまだが、足がない。



そういえば・・・



ちょうどお昼時だということで、リンがおいしそうだと言っていたパン屋でサンドイッチを買い、広場の噴水のベンチで昼食を食べていた晴はふと疑問に思ったことを口にした。




「リン、お母さんとは船で移動してたんだよね?」


「うん!」


「それじゃお母さんと別れた後はどうしてたの?」


「船で移動したよ?」


「だよな・・・」



しかし、こんな小さな子に船を操ることなんてできるのか・・・?




「んっとね、ママから誰にも言っちゃダメだって言われたけど・・・あのね、あっちに行きたいなーってお願いしたらね連れて行ってもらえるの」


「お願い?誰に?」


「うみ!!」


「うみ・・・うみ?」


「うん、うみ!」


彼女の様子からウミという名前の人ではなく、本当に海そのもののようだ。
そういえばと晴は白ひげの話を思い出した。



「目の前で自在に海を操って見せられたら信じるしかなくなった」




海を操る力。

幼いうちは力の制御が難しいと言っていた。
それならこの小さな体で船を動かすのは大変だったろうに。
でもそれならやっぱり航海術を覚えなくちゃならないか、と晴は少しだけ肩を落とした。


「でもおにいちゃんの方がすごいよ!!海の上を歩ける人なんて初めて見たもん!!」


「あ」

リンの言葉で晴はようやく自分が手に入れた力を思い出した。

ここ最近は生身での訓練ばかりだったためその力があることをすっかり忘れていた。
しばらく使っていなかったため少し不安になった晴は、何かないものかと辺りを見回した。


するとふと晴の手に握られていた紙コップに入った飲み物が目に入った。
これでいいか、と小さくアイスタイムと呟くと手から伝わった冷気により、紙コップの中身が凍ったことを確認した。
能力がなくなっていなかったことに安堵する反面、これなら青チャリいけるんじゃ、と思った自分にそれはないと自分自身でそれを否定した。
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