うみのおさなご(内容)
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てなノリで始まった宴会。
晴とその隣に座ったリンの周りには次から次へと人が押し寄せてくる。
とくにリンに対してはやっぱり母親の面影が残っているようで、目元がそっくりだとか笑った口元が似てるだとか完全に親戚のおじさんモード全開だ。
なんてのほほんとしてる暇なんてなくて、晴は晴で酔っ払いの飲んだくれに絡まれっぱなしである。
さっきから
飲んでるかァ!新人!!
らしき声をいくつも耳にするが、まず私は新人でもない。
そんなにお酒には強いわけでもないから、大学の飲み会で身に着けた「つぶれる前につぶす作戦」でちびちびと飲みながら次々と襲ってくる男たちをつぶしていく。
「おらおらァ!飲めよ新人!」
「いただいてるッス。さ、先輩もどぞどぞ」
「最後まで付き合ってもらうぜぇ!」
「まぁまぁ、まだ先は長いっすから、ほら飲んで飲んで」
と、そんな飲んだくれの波がひと段落したとき、目の前にぬっとフランスパンが現れた。
「よっ、俺は4番隊隊長のサッチってんだ!よろしく!」
立派なフランs…げふんげふん。
立派なリーゼントを揺らしながら伸ばされた手をしっかりと握り返し、よろしくお願いしますと返事を返す。
それに続いてやってきたのは16番隊長のイゾウにハルタ、ラクヨウなどなど、隊長格のおでましに少しだけファンの心をくすぐられた。
そして最後にジョズの巨体の後ろからにゅっと顔をのぞかせたのはあの雀斑ボーイことエースだった。
「俺はエース。一応2番隊の隊長をやってる。さっきは悪かったな驚かせたりして」
伸ばされた手をしっかりと握り返し返事をする晴の心はその顔に浮かべられた笑顔とは反して焦りを感じていた。
先ほど、船員たちを回っている間にティーチの姿を確認した。
そしてエースがすでに隊長を任されている。
これはつまりあの“悲劇”が近いということ。
「ほー、こいつがリサの娘か」
「見た目はほんとそっくりだな」
そんな晴の様子には気づかず、彼らの興味はリンへと移った。
まぁ、隊長たちも例にもれずリンをなでたり抱っこしたりと大変な可愛がりようで。
楽しそうに話す彼らを見ながら、一人、どうしたものかとため息をついた。
「ほら、ジョズも抱いてみろよ」
「!」
と、油断したのが悪かったのかもしれない。
イゾウに抱きかかえられたリンが、ジョズに回されようとしている。
…あるぇ、これってピンチなんじゃ
やめさせようとするもうまい言い訳が浮かばずあわあわとあわてる晴。
と、次の瞬間、イゾウの腕からリンが離された。
「そろそろガキは寝る時間だよい」
「マルコ、さん」
その正体はマルコだった。
リンの腕に触れた瞬間、一瞬眉間にしわが寄ったが、誰も気づきはしないだろう。
「こいつもそろそろ眠たくなるだろうよい。部屋に案内してやるよい」
「あ、ありがとうございます」
リンを抱いたままスタスタと歩き始めたマルコの後を追うように晴もその場を去った。