海賊短編

□早起きは三文の徳?
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「おー、寒い寒い」


まだ太陽は登らないものの、辺りが明るくなり、朝が訪れようとしていた。
朝もやの中、聞こえるのは静かな波の音だけ。
すーっと大きく息を吸い込めば、冷たい潮風に肺が満たされるのを感じる。


昨晩は、鍛錬で疲れ切っていつもより早く寝てしまったリンに付き合っていたらいつのまにか眠ってしまっていた。
そのせいで、今日はこんな時間に目が覚めてしまったのだ。

厨房に行けば4番隊のコックたちが朝食作りに励んでいるのだろうが、私が出る幕じゃない。



「ん?」


ぼーっと海を眺めていた時、ふとどこからか視線を感じた。
きょろきょろとあたりを見回せば視界に入ったのは青い炎。
こちらが気づいたことに向こうも気が付いたのか、一度大きく翼を広げると、ふわりと隣へ舞い降りた。


「マルコ隊長でしたか、お早いんですね」


いつもこんな時間に起きているんですか、と問えば肯定するように首を縦に振ったその青い鳥はすっと再び顔を上げると大きく空へと羽ばたいた。

それにつられて顔を上げれば、さきほどより空が明るくなり、水平線の向こうには白く輝く太陽が顔をのぞかせているところだった。


「、きれい・・・」


太陽の光に照らされ、その青はいっそう輝きを増す。
きらきらとまるで宝石のように輝く炎に目を奪われていたそのとき、がやがやと人の声が聞こえた。
誰かが起きてきたのだろうか、甲板に数人の男たちの姿を確認した。


「って、あれ?」


そして再び、空へと視線を戻し、あの青を探したがもうすでにその姿はそこにはなく、もう一度甲板へ視線を落とせばそこには、人の姿で船員たちに支持をだすマルコ隊長の姿があった。

「(いつのまに・・・)」


少し残念に思いながらその様子を見ていると、不意に顔を上げた彼と視線が合う。


目があったとたん、にやりと上がる口角。
そして唇にあてられた人差し指。
まるでさっきのは内緒だよい、と言わんばかりのその行動に、なんとなくあの美しい光景を独り占めしたようなそんな気分になって、思わず口元が緩んでしまったのは仕方のないことなのだ。





早起きは三文の、いやそれ以上の得をする

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