うみのおさなご(内容)
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サッチの言葉で甲板にいた男たちが動きを止め、やんややんやと言いながら場所を開けた。
そしてそんな中、サッチに呼ばれて出てきた一人の男。
体つきはがっしりした男で、右手にはナイフが握られていた。
リンを近くの船員に預けると、晴はその男の向かい側に立った。
「こいつは、アッシュ。結構な古株なんだ」
「よろしくな、手加減はしねーぜ」
「(ええええ、こわっ)お、お手柔らかに」
「ひひっ、まー頑張れよ!」
さて、こっちは何で行くか。
いろいろ手を出す前に何か一つ自分にあった武器ってのがあると楽だよなー
「あ、晴って獲物なんか使うか?刀あたりならあるけどよ」
「大丈夫です」
ダークブーツ発動
足にどこからともなく表れた黒い帯のようなものが巻きつき、あっという間に黒いブーツとなった光景に周りの船員たちから驚きの声が上がる。
アッシュは一瞬眉をひそめたが、ナイフを握りなおすとぐっと構えた。
「それじゃ、はじめ!」
サッチの掛け声とともにアッシュが地面を蹴った。
その体には似合わず、動きは早くあっという間に距離を詰められる。
向かってくるナイフを軽くよけるとアッシュはそのまま蹴りを入れてくる。
「っ!」
「どうした若造!動きが硬いぜ!」
「緊張、してるんですよっと!!」
蹴られた衝撃を腕で吸収しつつ後方へ下がり、そのまま地面を蹴って相手の懐に潜り込む。
今の晴の移動スピードは音速を超え、おそらく目視は難しいだろう。
右手に握られていたナイフを足ではじいた衝撃でバランスを崩したアッシュをそのまま後ろへ倒そうとしたが、アッシュはうまくバランスをとり、立て直した。
「やるじゃねーか」
「ありがとうございます」
どこからか取り出したもう一本のナイフで応戦するアッシュ。
ときどき、足や拳も使ってくるから油断はできない。
だが、さすがのアッシュでも晴の動きは見えないらしく、だんだんと反応が遅れてきた。
その一瞬のすきを突き、アッシュの懐に潜り込み下から思いっきり蹴り上げた足をぴたりと顎の直前で止める。
「ま、まいった」
「ありがとうございました」
その瞬間沸き起こる歓声。
しかめっつらをしていたアッシュもふっと笑うと晴に手を伸ばした。
「完敗だ。お前速いんだな」
「こちらこそ、アッシュさんの体さばきはとても参考になりました」
次は俺だ!いや俺だ!とやってくる男たちを軽く流し、能力を解きながらリンのもとへと戻るとリンが満面の笑みで抱きついてくる。
「おにいちゃん!かっこよかったよ!!」
「ありがと」
リンを抱き上げ、ふと顔をあげるとそこにはマルコが立っていた。
「マルコさん見てたんですか」
「よい。なかなかいい動きするじゃねーかよい」
「あ、ありがとうございます」
「だが、なんか動きがかてーよい」
「固い?」
「あぁ、動いてるっつーより動かされてるって言った方がいいのかねい」
「…動かされてる」
マルコのアドバイスは間違っていない。
たしかに、自分はあまりにもこの力に頼りすぎてるのかもしれない。
「よし」
「おにいちゃん?」
「リン、私がんばるから」
「?、うん!」