モノクロ世界(内容)

□12、もう迷わない
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「(うわあああああ、あたしたちって今絶賛喧嘩中だったじゃん!!あたしの馬鹿あああああ)」


菜緒が無事だったことにほっとしてしまい、あの教団でのやりとりをも忘れ、ついついいつもの調子で話しかけてしまった自分に気が付いた美代は言葉を止めると気まずそうに視線を下に向けた。


「…」


黙ったままの菜緒に美代の中の不安がさらに広がる。
意を決してそっと視線だけを菜緒の方にあげるが、下を向いたまま怒りをこらえるように拳を握りしめたまま口を開かない菜緒にさっと顔を青ざめた。


「(どどどどどおおおおしよおおお!こ、これはやばい!!美代ちゃんピンチ!!謝る前になれなれしく口きくとかまじ空気読めよ自分!!)あ、菜緒…?…その…ご、ごめんな「クハッ!!も、無理ぃ!!くははは、ひー!!ふっあはははは!!」…え?」


半分やけになりながらばっと頭を下げた美代の言葉を遮り、聞こえたのは菜緒の苦しそうな笑い声。
美代は未だその状況がつかめなくて中途半端に下げた頭の上にはてなマークを飛ばしている。
そんな美代を気にすることもなく見尻に涙を浮かべながら笑い続ける菜緒。
そんな奇妙な状況がしばらく続くとさすがにイラッとしたクロが##NAME1##に向かって頭突きをかまし、何とか笑い声が止まった。


「ひーっ、あははっ、ご、ごめん!ついっ!!…っふ…」

「いい加減にしろっ(二度目の頭突き」

「Σごふっ」










「いやー、ごめんごめん。あまりにも美代の表情がころころ変わるもんだからおもしろくて」


ようやく落ち着き、とりあえず話は帰りながらということで、朱雀(シロ)の背中に乗り込んだ2人と1匹。
振り落とされないようにクロを膝の上に乗せ、美代の背中にぴったりとくっついた菜緒。


「なぁ、美代」


突然呟かれた言葉はいたって真剣で美代は何?と答えた。


「ごめん、あの時は言い過ぎた」

「そ、そんなこと!」


私の方が、と続けようとした言葉は背中に回っていた菜緒の腕の力が強くなったことで遮られた。
何も言わずに聞いてくれ。
そう言われたような気がした美代は黙って菜緒の言葉を聞くことにした。


「まだ向こうの世界にいるとき、そりゃイノセンスで戦うキャラに憧れたり、自分も行ってみたいと思ったりしたことはあった。でも実際にこっちにきてみてそんな幻想とは程遠い世界だということが分かった」

「身体能力も上がって、一瞬、自分が強くなったように感じたのかもしれない。でも、私には人一人救える力もなかったんだ…」


―ゴズ…―


「そう考えたらもう止まらなかった。次はあの人かもしれない。死ぬはずなんてなかった彼らかもしれない。そして美代も…」

「未来を知ってる自分たちだったら救える命がある。でも逆に考えるとイレギュラーな自分たちのせいでなくなる命もあるということなんだよ」
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