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□キョウチクトウ
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「…私、外に出たいわ」
 少女は外を見て呟く。
「それは駄目でございます」
「お父様がお許しにならないから?」
「左様でございます」
「はぁ…駄目なのね」
「他に何かございませんか?」
「無いわ」
「分かりました」
 使用人は一礼して下がる。
「いい加減窮屈だわ…」
 この少女の名はベータ。父親はとある財閥グループの社長。つまりはベータは大金持ちのお嬢様である。
「ここの本も見飽きましたもの」
 ベータは本棚の本を一つ一つ触れる。
「私も冒険をしてみたいですわ」
 恋もしてみたいと少し思ったベータ。
「でも、外の人がどんな人達なのか分からないわ」
 ベータの知っている人間はこの屋敷の中の使用人やメイドなど、兄弟は全員違うところで暮らしているから知らない。
「あ、でも…メイアなら何か知っているのでしょうか…」
 メイアとは、ベータの父親の養子であるギリスの許嫁であり、ベータの親友ある。
「……」
―― チリン
 ベータは手元にあるベルを鳴らす。
「はい。なんでしょうかベータ様」
「メイアに会いたいわ」
「分かりました」
 使用人は一礼して下がった。
「さて、メイアに何を聞きましょうか」
―― コンコン
「どうぞ」
「メイア様を連れてきました」
「ありがとう。下がっていいわ」
「はい」
「どうしたの?ベータ」
「…メイアは外に出ますよね」
「うん、ギリスとデートに行くから出るわ」
「外ってどんな所なのですか?」
「うーん…色々あるからどこから説明しようかな」
「ちょっと待っててください」
 ベータは本棚から一冊の本を取り出す。
「ここの…そうここ、ここに書いてある、"ショッピングモール"とはどんな所でしょう?」
「ショッピングモールならこの前行ったけど、あそこは本当に楽しかったわぁ!素敵な服がたくさんあるし、美味しいスイーツなんかもたくさんあるし!」
「ほ、本当ですか!?」
 ベータはいつになく興奮している。
「ええ、あ、そうだわ!ギリスに頼んで明日ベータと私とギリスでお買い物しに行きましょ!!」
「いいのですか!?」
「ええ、きっとギリスならお父様に頼めるわ!」
「や、やった!外に出られるのですね…!」
「明日はいっぱい遊ぼうね!ベータ!!」
「ありがとうございますメイア!!」
 二人はひしと抱き合った。
「じゃあギリスの所に行ってくるね!」
「はい!」
 メイアは急いでギリスの元に向かった。
「明日…外へ出られる…!!」

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