夜空を支える騎士

□それぞれの戦い―終息
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「それじゃあディーノさん。あとは頼みます」

「ああ。色々サンキュな」


並中の校門をくぐる彼らに背を向け、柳と謙也は深く息を吐いた
一つ、彼らの仕事は終わりを迎えた


「お疲れ様、謙也」

「ありがとな蓮二。せやけど匣に慣れる為と思えば何ともあらへん」


集中力を鍛えるという面でもいい働きをした
もう絶対に、失敗は許されないのもある


「また気を張り過ぎるな」

「……せやな」


いつまでもあの時のことは謙也にとって後悔しかない。誰に何を言われようと
でも、仲間たちは優しいから、いつも気負いすぎるなと言ってくれる
それが今の謙也にとっては反対によく刺さる


「……さて、今は一体どうなっているかな」


明滅する炎を上空に見ながら、柳は話をそらすようにそう言った

























死ぬ気の零地点突破!!





沢田の修業していた技の名
それを言い当てたザンザスに手塚の眉間にしわが刻まれる


「あの男…あの技を使えるのか?」

「アーン?お前にしちゃ的外れだな。逆だろう」

「逆?」


妙な確信を抱いた跡部はジッと一点を見つめて柳眉を顰めた


「零地点突破とかいう技を、奴は受けたことがあるんだろうぜ」


跡部の直感がそう告げていた
少なくとも、間近で見たとも言える発言をザンザスはしていた

死ぬ気の零地点突破で死ぬ気の逆の境地となってザンザスの憤怒の炎を中和した沢田
しかし、ザンザスは嘲り笑う


「誰に吹きこまれたかは知らんが、零地点突破はそんな技ではない!!」

「!!」

「本物とは似ても似つかねーな
考えてもみろ。腐ってもボンゴレの奥義だぜ
使い手がそれほどダメージを受けるチャチな技なわけねーだろ!!」


ザンザスの言い分の通り、沢田の体は憤怒の炎を吸収しきれず摩耗していた
これほど自らにダメージを受ける技を使い続ける意味はない

勝機が見いだせない展開に手塚は押し黙るが跡部は口角を上げた
彼に諦めはない


「しっかり狙えよ」

「なに?」


親指を支点に左手だけ掌を内側にした構えの沢田はザンザスをただ一点に見ていた





「ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)か。確かに奴はボンゴレの血統だな」

「超直感、か」







「零地点突破 改」







それは沢田が見出した勝機だった

























赤也は仏頂面の雲雀が雨の守護者の戦いのあった校舎B棟から
ふらつきながら出てくるのを見届けて息を吐いた
あの雲雀が山本のためにポールを倒して解毒をしたことに驚きだが
それよりも山本に強敵と戦えるかもしれないというのにリングを譲ってこの後を任せたことの方が驚きだ


「それだけ奴も満身創痍ってことっスか」

「そりゃ、連戦であの怪我だしね。雲雀くんも人の子だってことだよ」

「……それ忘れそうになるっス」


というより信じたくない気持ちの方が勝っている


「さて、スクアーロも並中に無事についたみたいだね、蓮二」

「!」

「ああ」


音も無く現れた柳に赤也は勢いよく振り向いた
常の通り涼しげな面持ちの柳に不二が首を傾げる


「あれ、謙也は?」

「精市たちの許に行った。もし怪我をすれば事だからな
合流してこちらに向かうそうだ」

「あの2人なら大丈夫な気もするっスけど…」

「そうだな」


こちらも涼しげな顔でやって来る様な気がしてならない




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