学園アリス

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もうすぐ体育祭、そんな今日はそれの予行練習。



されどやはりと言うべきか、あたしはいつも通り寝坊してしまいました。






『ふぁ……おっはー』







外に出て蜜柑達の所に行くと、そこには大きくなった陽一に抱き抱えられた蜜柑が涙目で手をバタバタさせていた。


その瞳にあたしを写した途端、大声で叫びながら突進してきた。






「愛美ーー!!!あんたまた寝坊かぁ!!」

『ゥグッ!……い、いたい…』

「うち、うち……蛍とも離れて、敵って言われて、」






余程ショックなのか、片言な話し方に苦笑を零してその頭を緩く撫でた。







『まあまあ、それが体育祭だし。
後で思いっきり甘えればいいじゃん』






ね、と言うと蜜柑は少しポカンとあたしを見上げた後、そやな!と明るい笑顔を見せてくれた。

















こうして和んでる間にも、あの人は何するか分からない。


あたしは赤組の人たちと談笑している時でも、注意深く白組の方――月先輩を見ていた。


遠くからでも不満そうなパーマちゃんの顔に月先輩はあの怪しげな笑みを浮かべている。


それはまるで、何かを企んでるかのように思えてしまう…。






―――そんな時だった







「おい佐倉」







蜜柑を呼ぶ声にあたしたちは全員そちらを向いた。


そこには男女の姿が数人。


だけどその人たちは、言わば月先輩の側近の人たち。






「分かってんだぞ、お前が小泉さんに嫌がらせで隠れてアリスを無効化してるの」






その言葉を筆頭にペラペラと蜜柑を責め立てる。

当の本人は訳が分からないとでも言いたげに呆けている。


……まあ無理もない、かな。


恐らく今の子たちは……、







『月先輩のアリス……』







その憶測を証拠付けるもの、それは彼らの首筋にある小さな“痣”だ。


どうやらそれに蛍も気づいたみたいで、その紫の瞳はいつになく真剣だった。






「……っ、うち何も」

「「「うんわかってるやってないやってない」」」

「なななななな何でみんな…っ!」

「「「おおおおおおおちつけ!」」」

「わわわわわ分かんないけど、


転校初日、小泉さんがアリスを上手く使えなかった件で何か誤解してるみたいだね」






コントのようなそれにふふ、と笑ってしまう。


そんな中、委員長だけはある違和感に気づいたみたいだ。







「何か…小泉さんを囲ってる子達、ちょっと…いつもと様子が違うっていうか、

まるでフェロモン浴びた時の人みたいな……。


でも小泉さんはアリスをむやみに使えないみたいだし、」






委員長は最後に小さく声を落とした。







「みんな一体……っ、」








その直後だった




何かを感じ取ったのは



バッと秀ちゃんと昴ちゃんと方を見ると、二人も固い顔をしながらどこかを見ていた。


それも呼ばれた事により、名残惜しげに逸らされたが。



一体何が、と思った瞬間




予行で使われていた数々の道具が一斉に飛び交った。







『チッ……!誰がンなふざけた事を――!』







あたしは向かってきた道具を氷のアリスでパキリと凍らす。


するとそれは凍った瞬間に下へと一直線に落ちていき、やがてはガシャン!と音を立てながら割れた。







『……まさか、この騒ぎ……っ、








蜜柑………!!!』








あたしはこの騒ぎのせいで辺りに舞う土煙の中、必死に蜜柑ともう一人、




月先輩の姿を探した








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