学園アリス
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はてさて、穏やかな日々を過ごしている中、
あたしは今日も今日とて寝坊です。
『ふぁ…おはよーう』
「あ、愛美!おはよう!遅いで!」
『眠たいんだもん』
「ムキー!!あ、聞いて聞いて!」
そうして見せてきたのは石。
どうやらこれがずっと蜜柑の周りをうろちょろしているようだ。
『へえ…石が、ねえ…』
「せやねん、これってアリスストーンやんな!?」
『んー…』
蜜柑からその石を受け取って見つめる。
微かに感じるのは確かに“アリス”だ。
『アクアマリンのストーンに…瞬間移動のアリス…かなあ?』
「やっぱこれってアリスストーン!?」
『だと思うよ』
きっとこれを蜜柑に拾わせるように仕向けたのは彼―――秀ちゃんだろう。
絶対今頃ほくそ笑んでるに違いない。
『とにかく、この石に…と言うかこのアリスに好かれてるんだよ。
大事にしなね』
「…っうん!」
蜜柑はあたしの言葉に嬉しそうに目を細めた。
「ハーイ!こんにちは。
初等部のみの合同能力別クラスのお時間です♡
何と今日の授業は、初のアリスストーン作りを行いま――す♡」
杏樹先輩のその言葉に目をキラキラさせる蜜柑。
その後ろでは委員長が上手く作れるかななんて言ってる。
…優等生の君なら全然いけるよ!とあたしは心の中で叫ぶ。
そして説明を受けたあと、みんな先生たちに指導を受ける。
…特力からは殿内先輩か。
のだっち、こんな日くらい居て欲しかった。
あたしは今更こんな事しなくても出来るため、キョロリと辺りを見渡す。
すると視界に入ってきたのは、またもや余裕をかました棗。
…彼も出来るのか、何という優等生。
普段は不良みたいなくせにね。
――――そうして各々出来たみたいで、
だけどまあ…結果は、
ち――――ん・・・
皆さん手のひらに見えるか見えないかぐらいの大きさが出来上がっておりました。
もちろん委員長と蛍はちゃんと出来てたけどね。
『…ちっさ』
「愛美ー!そんなに言うんやったら愛美もしーよ!
棗はともかく愛美一人だけ何もしてへんやんか!」
「そうよ!貴方もしなさいよ!」
パーマちゃんもムカついたのか蜜柑に同意を示してくる。
あたしはえ、と口元を引きつらせチラリと杏樹先輩を見やる。
だけど彼は満面の笑みを浮かべながらコクリと頷いた。
イコール、“やれ”と言うこと。
あたしはそれに泣く泣くアリスストーンを作り始めた。
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