学園アリス

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杏樹先輩が入ったことによって、クラス内は静かになって、みんな自分の席に着く。





「は〜い、みなさんおはよう♡
今日は新しいお友だちを紹介しまーす!」





皆にそう告げた先輩は、私の背中をトントンと軽く叩く。その小さな合図で私は口を開いた。






『はじめまして、雪峪 愛美です。

アリスは氷と記憶。これからよろしくお願いします』





最後に、杏樹先輩のときと同じようにぺこりと頭を下げる。それで何かしら反応はあるかと思ったのに、



――シーン


……なんか、何も反応無いのは悲しいです。

私がそう思ってると、




《ちょ、かわいくね!?》

《え?すっごい美少女……!》

《いや、アリス2つ持ちってスゲー!》






などなど、こんな会話がされていることは知る由も無かった――。






「はい、じゃあ自己紹介が済んだところで愛美ちゃんの席は……蜜柑ちゃんの前でーす♡」





――――…蜜柑?




その名前に私は俯けていた顔を思い切り上げた。私の瞳は、真っ直ぐにこちらを見てくる女の子の瞳とかち合った。




「え、うちの前!?やったー!!」






私と目があったその女の子はそう言って嬉しそうに目を細めた。


左右に髪をツインテールにしてる、女の子。


あぁ、貴方なんだね。

貴方が、柚香先輩の……。


私は手を挙げて私に向かって振ってくるそれを目印に、蜜柑に近づいて行く。





『初めまして、これからよろしく!』






にこっと蜜柑に笑いかける。





「(うわ、めっちゃ別嬪さんや…!)

うん!こっちこそよろしくな!
うちは佐倉 蜜柑言うねん。蜜柑って呼んでな!」





柚香先輩とそっくりな笑顔でそう言った蜜柑。


あぁ、似てる……。





「あたしのことは柚香って呼んでね!」





あの時、きっと私はこう言った。





『うん!それじゃ、私のことは愛美って呼んでね!』





『はい!それじゃあ、私のことは愛美って呼んでください!』





やっぱり、蜜柑は柚香先輩の子だよ……。




そうして杏樹先輩の話が終わって、私は質問攻めに。





「すごいね!アリス2つも持ってるんだー!」

『あはは、そうかな?」

「お母さんとお父さんもアリスだったの?」

『うん、二人ともアリスだよ』

「そうなんだ!星階級は?」

『えー…っと、トリプルかな?』





その言葉にクラスのみんなは一斉に私を見た。…だから嫌だったのに。





「「「えっ!?トリプル!!?」」」





みんなが口を揃えてそう言うから、少しビックリする。…入学して即トリプルってのは…やっぱ目立ったか…。






『あー………うん、』

「すごーい!初等部で四人目のトリプルだ!」





4人目?





『4人って……他には誰が、』

「あたしよ」





私の問いかけに声をかけてきたのは、可愛い女の子。見た感じはポーカーフェイスかな…その紫の瞳はとっても綺麗。




へぇ…、こんな美少女いるんだ…!私もこんなに可愛く生まれたかった。





「はじめまして、あたしは今井 蛍。よろしくね、蛍って呼んでちょうだい。

(この子は売れるわ…)」





蛍、……名前まで可愛い!!そうやって浮かれた私は蛍の目がキランと輝いているのも知らなかった。





『うん、よろしくね!私のことは愛美で!』





ふふっと私は蛍に笑いかけた。





『てか蛍もトリプルなんだ?』

「えぇ、あたしのアリスは発明のアリス。なんでも作れるわ」

『へぇー!すごいんだねぇ蛍』






何でも作れるってすごいな。発明のアリスかあ……。






「あと、委員長もトリプルよ」

『委員長?』





こんな荒れ果てたクラスにも委員長っていたんだ……。私たちの時はいたかな?



で、その委員長って……





「あ、あのっ!」

『はい!』




大きな声で話しかけられ、つい私も大きく返事をしてしまった。

隣をみると、眼鏡をかけた男の子。





「ぼ、僕、飛田 悠って言います。このクラスの委員長なんだ」

『君が委員長?』

「う、うん」





……すごい。こんなクラスの委員長ってどんなイカツイ人かと思ったら、こんな優しい人だなんて……。





『あたしのことは愛美って呼んでね、これからよろしくね!委員長』

「!う、うん!僕のことは委員長でもなんでもいいよ!

こっちこそよろしく!」





ほんわりするような笑顔を向けてきた委員長に、私もつい笑みを零した。






『あ、委員長もトリプルなんだよね?』

「うん、そーだよ!」

『委員長って何のアリス?』

「僕は幻覚のアリスだよ」





幻覚か、潜在系だね。

幻覚のアリスでトリプルって……よっぽとアリスの能力が高いんだろうな。





『へぇ、そうなん、』
「ちょっと!」





私が感心してると、私の科白を遮って誰かが割り込んできた。



基本知らない人からそういう事をされるのは嫌いな方だ。私はムカッとしながら声のしたほうを見ると、


そこに居たのは毛先だけパーマな女の子。


……なんで毛先だけなんだろ、おしゃれだとおもってるのかなぁ。





『……なに?』

「さっきからうるさいのよ!
私と棗くんと流架くんの邪魔をしないでくれる!?」






……何それ?てか棗と流架って誰のこと?





『…あーあー、それはすみませんでしたー』





いかにも“反省してません”アピールをする。だってムカつくんだもん。

そういやぁ…昔からだな、この性格は。その度に泉水兄とか怒らせてたな…。


それはパーマちゃんも例外じゃなくて、泉水兄と同じように真っ赤になって怒ってきた。


けど反対に蜜柑は爆笑してる。





「あははは!!愛美最高や!!もっと言ったれー!」

「佐倉さんは黙ってて!

あんた何様のつもり!?たかだかトリプルが棗くんたちの邪魔をしないで!」

「別に棗のことなんてどーだってええやん!棗は変態嫌みキツネやねんから!」





………変態嫌味キツネ…、





「あっはは!何その名前!!
変態嫌みキツネって…ネーミングセンスあるのかないのか……ふふふっ、」





私が1人爆笑してると、






「おい」






声がした。






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