The philosopher's stone
□12
1ページ/4ページ
暑い暑い中、始まった筆記試験。
私はカンニング防止魔法のかかった羽ペンをゆったりと動かしていた。
もう解き終えた私は何もすることがなく、くるくると羽ペンで遊んでいたがいつの間にかぐっすりと寝ていた。
実技試験も何の障害もなく終えることが出来た。
まあ何度もやってる私にとってこんなのお茶の子さいさいだけどね!
フィリウス―――フリットウィック先生は、生徒一人一人を部屋に呼びパイナップルをタップダンスさせること。
ミネルバはねずみを嗅ぎたばこ入れに変えること。
セブルスは忘れ薬を作ることだった。
そうしてすべての試験を終え、張り詰めていた緊張も緩みほっと息を吐いた。
ハリーたち三人は何を思い立ったのかどこか急ぎ足で走り去っていった。
「「ようシアン!」」
『ジョージ、フレッド!』
「試験はどうだった?」
「スネイプの奴に意地悪されなかったか?」
くるくると話し手が代わるのを目で追いながら答える。
『試験はまあまあかなー。試験前も悪戯のことばっかり考えてたし!
スネイプ先生には何もされてないよ?
それに私、薬学好きだから!満点の自信あるね!』
エヘン、と胸を張るとポカンと口を開きこっちを見てきたが、すぐにそれは笑みへと変わりついには大爆笑しだした。
「アハハハハッ!さすがシアン!」
「試験前に悪戯のこと考えててどっからその自信が来るんだよ!」
バシバシ!と互いの背や腕を叩く。
…どうでもいいけど、痛くないのかな?
あ、そーだ!
『ねね、もう試験も終わったし…』
「「終わったし?」」
双子は先を促してきたが、明らかニヤニヤしている。
もう二人も私が何を言いたいのか分かってるはずだ。
さすが、仕掛け人に相応しい。
『悪戯しよう!』
「「さんせーい!!!」」
「そうと決まれば早速“あれ”だろ!」
『じゃあ二人は生徒ね!私は…』
ニヤリ、と三人で怪しげな笑みを浮かべ、足早に自室へ向かいそれぞれ悪戯道具を取りに行く。
その後、私がフレッドたちの部屋に行き最終確認をして、みんなが集まる唯一の機会である夕食へ向かった。
「……よし、もう全員いるな」
『でも校長先生がいないよ!』
「クソ、僕らの計画が筒抜けか!」
アルバスがいないのは由々しき事態だ。
何故かって?そんなの私が仕掛ける相手はアルバスだったからに決まってるでしょ!
『うー、どうしよー…』
「他の先生にするか?」
「いや、あれはダンブルドアにしか出来ない」
『フレッドの言う通り…私がしようとしたのは先生の髭を蛍光色のピンクにした後、頭を坊主にするってことだもん』
一つの想像からこれを計画し、さらにはそれを現実に起こさせようとしたのに。
想像で笑ってたのを現実で見て笑えると思ってたのに。
アルバスのバカ。もうマグル製品あげないんだから。
「それじゃあ計画変更だ」
『プランB?』
「そうそう、それでいこう」
『んじゃ、先に二人からか…っし!頑張ってね!』
「「任せろ!!」」
コソコソと話し合い、やっと終えたところで双子が杖を取り出した。
二人ともごそごそとローブのポケットを探り、出てきたのはピンクと青の二種類ある風船。
フレッド、ジョージが此方を見てきたからそれにコクリ、と頷き双子ならでは息ぴったりにそれを宙に浮かせていく。
「何あれ!」
「さあ…?」
「もぉ何ー!?」
そんな声が上がり、大広間にいる人の視線は徐々に上がっていく風船へと向けられる。
もちろん生徒のみならず、先生たちも。
先生たちはそれを見た瞬間、双子と私を見てきたけど。
風船があるところまで上がった。
「「1…2…3!!!」」
二人のかけ声で、風船はパァアン!と音を立てて割れ中からは花びらや金箔、さらには星までもが振ってきた。
手にとろうと広げる者もいたが、残念。
それは空気以外の何かに触れた瞬間に跡形もなく消えてしまうのだ。
そうして感動している隙に、次は私が仕掛けていく。
『お楽しみはこれからだよ!』
大きな声を上げると、私は杖を一振り。
すると大広間の明かりがすべて消え、唯一の灯火は風船から出てきた星と金箔と花びらだけ。
それに感動の声が辺りを包む。
私はニッ、と暗闇の中不敵に笑うともう一度杖を振るった。
「ぅわぁ…!」
「キレー……」
「もうすぐ夏なのに…」
「雪の結晶だなんて、私初めて見た…!」
そう、私が出現させたのは雪の結晶。
三つの光に加えてキラキラと光るそれは実に幻想的だ。
もちろんこれで終い、な訳がない。
パレードにフィナーレは付き物でしょう?
私はフレッドとジョージにアイコンタクトを取り、三人同時に杖を振った。
――――パン!パァン!
まだ消えていないものが次々に音を立てて消えていく。
そしてそれによって創られた物、それは―――
“悪戯仕掛け人、ここに参上”
カラフルな色であしらわれたそれは、数秒するとじわり、じわりと消えていった。
「「『thank you!!!』」」
大声でそう叫ぶと、私たちは綺麗に一礼した。
その後起きた大きな喝采と歓声は、どこか懐かしいものだった。
私たちはお互い顔を見合わせ、ニッコリと笑った。
.