The philosopher's stone

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ハリーたちと一緒に行動しなくなってもう何日が経っただろうか。


あれからまた三人でこそこそしているのを見かけていたけれど、もうあたしには関係ないとまったく関わっていなかった。





『ふぁあ…ねむ、』

「あ、シアン!これ知ってた!?」





朝いつも通りに大広間へ行こうとしたら、大声でパーバティがラベンダーとともにこっちに駆け寄ってきた。


これ?と首を傾げると今度はラベンダーがさっきのパーバティに負けじと声を張り上げた。


まるで、その場にいた生徒全員に聞かせるように。





「ハリー・ポッターとその他何人かが寮の点数を一気に百五十点も減らしたの!」






その言葉に驚いたのはあたしだけじゃない筈だ。

現に周りの生徒も困惑の表情を浮かべている。

それにしても…一気にそれだけ減点されるって何があったの?





『いったい何が…』

「それは私たちにも…だから良くハリーたちと一緒にいたシアンなら何か知ってるかな、と思って…」

「ハーマイオニーに聞いても何も言ってくれないし」





ねえ?とお互い顔を見合わせて小首を傾げる二人に、ごめんと首を横に振ると少し驚かれた。






「どうして!?あんなに一緒にいたのに…」

『んー…ほら、あたし最近一緒にいないから!』

「そう言えばそうねぇ…何かあったの?」






心配そうに聞いてきたパーバティにうん、ちょっとね、と答えると






「そう…なら、これからは私たちと一緒にいましょ?」

「そうね!私ももっとシアンと話したかったの!」






パーバティの問いにラベンダーは嬉しそうに目を細めて同意した。


あたしは一瞬目を見開いたけど、二人の嬉しそうな笑顔に自然と頬が緩まる。





『うんっ、よろしくね!パーバティ、ラベンダー!』

「「ええ!!」」






そうしてあたしを真ん中にするように二人は移動して次の授業に向かった。















――――




翌朝、パーバティとラベンダーと一緒に朝食を食べに大広間へと向かう。


席に着くと同時に梟が飛び交った。




あたしの手元には少し小さい包みが一つとお手紙が。

ちら、とハリーたちの方を見るとハリーとハーマイオニー、それからネビルの元へ手紙が届いた。






「あれって絶対罰則の通達よねー」

「あの三人だったのね…というか、三人ってことは一人五十点の減点ってこと?」

『そうみたいだね…ネビルは巻き込まれた、ってとこかな』

「可哀想…ってシアンそれ何?」






ラベンダーがネビルたちから視線を外し、今度はあたしの手元にそれを向けた。


パーバティも何々?と興味津々だ。






『んー、手紙には

[これを君に渡すのを忘れてた。君の事だからまた無茶すると思っているからね。
まあ僕はいつも傍観していたとは言え端くれだ。それに君たちの後処理係りだったんだ。想像はつくよ。

だからこれで少しでもフィルチを欺くようにね。気をつけるんだよ。

From.ムーニー

Ps.寮の点数をバカみたいに減らさないように]

……だってさ、』






手紙を読み上げ、やっぱりリーマスだったかと手紙を仕舞うと、二人がやけに静かなことに気づいた。


それにん?と思い二人を見やると、二人の目はキラキラと輝いていた。






「ちょっとちょっと!!ムーニーって誰よ!?」

「まさか恋人!?」

「聞いてるのシアン!!」






喰い気味に聞いてくる二人にあたしは違う違う!と大きく首を横に振った。

リーマスと恋人って…あり得ない!





『ムーニーとは友達だよ!』

「あら…そう?」

「つまんないわねぇ」







そう言ってやっと解放され、あたしはホッと息を吐いた。


そしてコソッと包みを開く。


それは小さな瓶だった。


だけどそれは、あの日あたしたちが作った大切な物。


あたしたちの、努力の結晶だった。







『……クス、リーマスったら…』







貴方が端くれだなんて嘘ばっかり。


貴方も充分悪戯仕掛け人の重役を担っている一人だよ。


こんなにも最高な物を贈ってきてくれるなんて、さ。






『最高だよ、ムーニー』







ふふ、と微笑むとあたしはその包みと手紙をローブの中へ仕舞った。










――――



そして夜の九時



あたしは校長室にいた。


出された紅茶を一口飲む。


うん、美味しい。






『今日はダージリンなんだね、アルバス』

「ほっほっほっ、やはりシアンには分かるかの」

『当たり前だよ。とっても美味しい』

「それはただのダージリンではない。特別な地方で採れた茶葉なんじゃよ」






お茶請けのスコーンを食べながら茶目っ気にウィンクするアルバスにさすが、と舌を巻いた。



そうして数分が過ぎた頃、さて、とようやく本題に入ろうとした。


やっとか、と一息吐くと持っていたカップをカチャン、と置いた。







「今晩ハリーたちが処罰を受けるのは知っておるかね?」

『処罰を受けるのは知ってたけど今晩っていうのは知らなかった』

「ふむ、そこでじゃ。処罰の場所は森――禁じられた森なんじゃよ」






真っ直ぐにそのキラキラした目で見てくるアルバスに、もう先の言いたいことが分かった。






『つまりあたしに着いていって欲しいと、』

「さすがじゃの、そうじゃ。ケンタウルスがいるからと言って安全だとは言いにくい」

『それに最近…ユニコーンが殺されるって被害も出てる。


そんな地に「ハリー・ポッター」が足を踏み入れるのは賢いとは言えないね』







はぁ、とため息を一つ零してアルバスが用意してくれたスコーンを口に入れる。

じんわり広がる甘さに少し疲れが取れたような気がした。






「もちろん無理に、とは言わんよ。
それに最近仲が良くないみたいじゃからのう」







探るようなそれにぷい、と顔を背ける。

至極楽しそうなアルバスの笑い声が室内に響く。


そんな時に目に入ったフォークスは此方を見て小さく鳴いているが、それはどこか心配そうにしていた。






『……仲が良くない、と言うか…』

「セブルスを疑っておる、からかの?」






ズバリと言い当てたアルバスに、あたしはガクリと力無く頷いた。







『あの一直線なとこはリリーに似てるね。

まあジェームズにも似てるか』







あのリリーへの告白とかね、と小さく笑うとアルバスも思い出したのか目尻を落としてまた笑った。







「それで…頼まれてくれるかの?」

『……了解、校長先生』






かしこまった返事に、楽しそうに口元を緩ませたのを最後にあたしは部屋を出た。





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