The philosopher's stone
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あれから数日経ち、漸く医務室から解放された。
見舞い客は後を絶たなかったらしいのだが、ポッピーが医務室への出入りを禁止した為、顔を合わせることは出来なかった。
それで良かったのかもしれない。
今、ハリーと顔を合わせるのは少し気が引ける。
一生徒の私が、この学校の校長であるアルバスにあんな口を利いていたんだから。
それをアルバスは咎めることをしなかった。
それが余計にハリーに謎を与えているだろう。
『んー…っ、なんか人少ないな…って、』
今日クディッチか!と思いだし、私は足を早く動かした。
もう、逃げない。
ハリーはハリー。ジェームズじゃない。
そう、何度も頭で唱えて――――。
競技場に着くと、もうそこは歓声の渦だった。
パッと上を見上げると、ちょうどハリーがスニッチを捕まえるところだった。
それに、自然と頬が緩む。
ハリーの緑色の瞳は、今までにないくらい輝いていた。
「あら!シアン!」
『ハーマイオニー!久しぶり!』
「ほんとよ!もう体調は大丈夫なの?」
『ん、平気……、』
そこまで答えて、ふと周りを見渡す。
他の教師たちはいるのに、セブルスとクィリナスだけいない。
それに気づいたら、後は早かった。
『っ、ごめん!ちょっと用事!』
「え、ちょ……シアン!?」
後ろから聞こえるハーマイオニーの声に振り向かず、ただひたすら走っていた。
どこに、何てわからない。
ただ、走っていた。
ふと、そこで上空を見上げると、ハリーが箒に乗って森の方へと飛んでいく。
もしかすると、そこに二人がいるのかもしれない、と確信して私もそこへ向かった。
『―――つ、着いた……』
しんどかった、と息を吐くと、細々と聞こえてくる声。
それに耳を静かに傾けた。
「……な、なんで……よりによって、こ、こんな場所で……セブルス、君にあ、会わなくちゃいけないんだ……!」
「このことは二人だけの問題にしようと思いましてね」
焦り、どもるクィリナスの声とは対照的に、セブの声は酷く冷淡だった。
「生徒諸君に“賢者の石”のことを知られてはまずいのでね」
それに、微かに遠くの木々かカサリ、と揺れる音が聞こえた。
耳が元より良い私。そこにハリーがいることは明確だった。
「あのハグリッドの野獣をどう出し抜くか、もう分かったのかね」
「で、でもセブルス……私は…」
「クィレル、私を敵に回したくなかったら、」
そこで一度言葉を切ったセブは、グイッと一方前に出た。
より近くなる二人の距離。
「ど、どういうことなのか、私には……」
「私が何を言いたいか、よく分かってるはずだ」
「……あなたの怪しげなまやかしについて、聞かせていただきましょうか」
怪しげなまやかし…?
それって、一体……。
「いいでしょう。
それでは、近々、またお話することになりますな。
もう一度よく考えて、どちらに忠誠を尽くすのか、決めておいていただきましょう」
セブは踵を返すと、静かに歩き出す。
……が、何を思ったのかくるりと振り返る。
「それと、言い忘れていましたが…。
シアンに手を出すな。
後悔するぞ、お前も、シアンも」
そう言い残し、セブルスは今度こそ去っていった。
ハリーももう十分だと思ったのか、周りに気をつけて飛んで消えていった。
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