The philosopher's stone
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あの部屋から出てあてもなく歩く。
来たときと同じように静まり返っている渡り廊下を、ただ静かに。
授業に戻ろうかと思ったが、今更出る気分でもないしいいやと一人ごちた。
――――どれほど歩いただろうか。
不意に動かしていた足を止めて空を何気なく見上げた。
青々とした空は私を惜しげもなく照らしている。
そんな時、ポンと誰かが私の肩をたたいた。
『………あの、』
「あ、いきなりごめんね?」
『いえ…ただビックリしただけですから』
ニコリと笑うと、私は見つめていた空から目線を“彼”へと写し変えた。
そこで、初めて気づく。
彼は、とても顔が整っていたのだ。
かの友人―――シリウスまでとはいかないが、彼は美形だった。
ポーッとそのまま彼を見つめていると、彼は少し困ったような…それでいて少し嬉しそうに口を開いた。
「僕はセドリック、セドリック・ディゴリーっていうんだ」
『あ、私は「シアン・ロイナール、だろ?」
台詞を遮られたそれは、私の名前だった。
私はそれに目を丸くする。
『どうして私の名前を……』
「きっと学校中知ってるよ、君のことは」
『何で…?』
「んー…、君があのウィーズリーの双子と仲が良いこととか、最近双子に混じって悪戯をするのはシアン・ロイナールだとか…。
それに、飛びっきり可愛いってのでも有名だ」
最後にパチンとウィンクするセドリックに私は頬を赤く染めた。
『な、なななないない!!
最後のは絶対ない!』
「え、そうかい?
でも僕はこの噂が本当なんだって確信したけどね」
『〜〜〜っ、それはどうもありがとう!』
にっこりと微笑まれた私はいたたまれなくなって自嘲気味に言葉を吐いた。
『あ、そう言えばセドリックはハッフルパフなんだね』
「そうだよ、ちなみに双子と同じ学年」
『……えっ、先輩だったの!?』
正確に言えば私の方が何倍も年上なのだが、設定上では違う。
「ふふ、別にいいよ。
今まで通り、セドリックで。
敬語もいらない」
よろしくね、シアン。と手を握られた私の顔はきっと最高潮に赤いだろう。
そして私は蚊の鳴くような声でそれに返事をした。
『………よろしく、セドリック』
それに嬉しそうに笑った彼は、確かにヘルガが気に入りそうな感じだ、と密かに思っていた。
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