学園アリス

□02
1ページ/2ページ




ピピピッ、ピピピッ、ピピッピ、




『ん…、あ、さ……』





眠たい目を擦りながら体を起こす。目覚まし時計をOFFにしたことを確認してから私はベッドから降りた。

ぺたん、と足を床につける。ボーッとする頭でぐるりと部屋を見渡した。





『……あぁ、学園か…』





瞳に映るのは今まで住んでた部屋じゃなくて、広い部屋に贅沢な家具。

フッと短く息を吐くと、私は準備するために立ち上がった。







――――10分後、






『…行って来ます』






私は誰もいない部屋に向かってそう言うと、食堂に向かった。





「あ、愛美やん!おはよう!!」





蜜柑がすっごく元気よく挨拶してきた。…朝からそのテンションって凄いと思う。

私は自他共に認める低血圧だから、朝はいつもよりテンションは低い。





『んー、おはよー…』





カタン、と蜜柑の隣に座る。
するとタカハシさんが朝食を持ってきてくれた。





『ありがとうございます』





いただきます、と手を合わせてから一口食べる。

……ん、おいしい。相変わらずここの料理って美味しいんだよね!





『てか蜜柑ってシングルだったんだね』





ご飯シングルのだし。
そんな私の言葉に蜜柑はキラキラと目を輝かせながら口を開いた。





「ついこの間シングルなってん!」





すごく嬉しそうにバッチを見せてくる。

……ん?シングルに"なった"?

まさか…―――、





『もしかして…、前まで星なし、とか……?』





私が恐る恐る聞くと、





「えへへ…うん、うち星なしやってん」






恥ずかしそうに頭を掻きながら答えてくれた。さすがの問題児の柚香先輩でも星なしはなかったよ…。


一体何したんだろ?蜜柑…。





『どうやってシングルに昇格したの?』





星なしからシングル昇格って、星の昇格はよっぽどアリス訓練を頑張るか、何か他に特別なことをしない限り出来るものじゃない。





「え、やっぱ気になる!?」

『うん!』





しょうがないなー!と蜜柑はドンっと自分の胸を叩いた。





「あんな、この前まで棗入院しとってんけどな、」





――入院

やっぱりアリスのタイプかな…?





「そこで、入院中の棗をあの大スターの玲生が誘拐してん」

『…………………は?』





え、今…何て言った?玲生が棗を誘拐?


――――Zか……!





「ほんで、うちとパーマで棗たちを追いかけてん!まぁ、結局玲生に捕まってんけど……。

ほんで見事棗を救出して学園に戻って来ましたー!……と言うわけで、シングルになってん!」





………すごい。

その行動力、まさしく柚香先輩と泉水兄の血を引いてるね………。


ほんと、よく無茶するなぁ…。きっとこんな蜜柑を見たら二人とも超心配しそう。

過保護だからねえ、二人とも。





『へぇー、すごいんだね!

でも学園抜け出して玲生を追うなんて……その行動力はほんと尊敬するよ』





ふふっと私は笑う。そーやって話ながら教室に向かい、中に入ると心読み君とキツネ目君がいたからおはよう、と声をかけると二人ともおはよーと返してくれた。






『委員長おはよう』





私は近くにいた委員長に声をかける。すると委員長はパッと私を見て、





「あっ、愛美ちゃん!おはよう!」





委員長はいつものほわ〜とした空気を出して挨拶してくれた。





『蛍もおはよ"パシャッ"……』






笑いながら蛍に挨拶すると、いきなり写真を撮られた。

こんな事をされるのは初めてだったから私は思わず固まってしまう。





「おはよう愛美、いい写真をありがと」





蛍は一仕事終えたかのようにふー…と息を吐いて、“お金と私”という本を広げた。


昔と変わらず個性的な子が揃ってるな…。



そうこうしているうちに、杏樹先輩が教室に入ってきた。





「はーい、みなさんおはよう♡
今日は能力別クラスだね!皆さん頑張りましょう!

あ、愛美ちゃんは特力でーす、蜜柑ちゃんよろしくね♡
体質系の子はまた会いましょう!」






そう言って、杏樹先輩は私をチラッと見て出て行った。





「愛美特力やねんなっ!うちと一緒やでー!」





蜜柑がにこにこしたがら来た。

そっか…、蜜柑無効化だもんね…。泉水兄も特力だったし。

私も全能のアリスだから特力だったし……って、結局特力か。






また、あの場所に行けるんだ…。

泉水兄や柚香先輩、馨先輩や玲生、杏樹先輩。

沢山の思い出が詰まった、あの場所に――。





「愛美ー?はよ行こーや!」






蜜柑はすっごく行きたそうに私を待っていた。

その様子だけで、特力がどれだけ楽しいかわかる。

その姿は、本当に柚香先輩にそっくり。あの人もいつも特力へ行きたがってたし…、馨先輩なんかはあそこで男の人と…って今はどうでもいいか!





『うん!蛍、委員長、またね!』





2人にバイバイと手を振って、私と蜜柑は特力のクラスに向かった。






「あんなー、のの子ちゃんたちは技術系やねんで!」

『へー、委員長は潜在系?』

「うん!ほんでルカぴょんが体質系やねん。棗が、……危険能力系やねん」





蜜柑が言いにくそうにそう言った。

危険能力って、特別生徒のこと…だよね?棗がそれってことは、"任務"してるのかな……。


あの頃の、私や杏樹先輩、それに玲生、柚香先輩のように。





『ま、所詮は大人が決めたんだから、棗くんの能力はまだわかんないよ。

アリスは使い方次第で毒にも薬にもなる。棗くんのアリスもそうだよ』





もちろん蜜柑のもね、と言うと一瞬呆気になった蜜柑もじわじわと笑顔を見せた。





「せやな!その言葉、棗に言ってあげたいわ!」





ふふふー、と2人で笑ってると、





「あ、ここやで、特力の教室!!」





蜜柑のその言葉で、私は蜜柑の指した方を見つめた。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ