D.Gray-man

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ガシッとクロスの広い胸に抱かれながら、僕はきっと生気を失ったような顔をしてるんだろうな、と思った。



だから、クロスたちの話は耳に聞こえてなかった。






ふいに、カッ!とこの場が何か明るいものに包まれた。


ゆるりと瞳を外に向けると、そこにあったのは「生成工場」(プラント)――卵だった。






『………して、クロスがここを…』

「お前にも手伝ってもらうからな、セシル」

『……は、僕が?するわけないだろ……?』

「…とにかく、お前もやるんだ





アレン」







鋭い瞳をスッとアレンに向けた。

その言葉が衝撃的だったのかアレンは目を丸く見開いた。



それをクロスは無視してまた術を唱え始めた。







「オン――a(アバタ) u(ウラ) m(マサラカト)


効けよ……!縛(バル)!!!」







キン、と耳鳴りのような音が聞こえる。


クロスは今の術をアレンに説明した後、ティムを使いある空間へと繋げたモノへ放り込んだ。







「どうして僕が……っ!」

「アレン君っ!!!」






リナリーの叫ぶ声。そういえば今日はよく叫んでる。


僕はチリチリとクロスからの痛い視線に耐えかね、ガンっ!!とそこらへんにあったスカルのまだ原型のあった頭をグシャリと蹴り潰し、アレンと同じ所へと踏み込んだ。


















――――





「……!?

ここは…っ、師匠…リナリー…?」

『うるさい』

「!!」







起きて早々騒ぐアレンに一言投げかける。


まさか自分以外に誰かいるとは思わなかったのか、思いっきり肩を揺らした。



だけど次の瞬間、ある声がこの部屋を支配した。










「――ココハ千年公モ知ラナイ………。


「14番目」ノ秘密部屋………」







ドクン、と心臓が荒だつ。


その声は、僕が欲して止まないものだから。







「オレノ「鍵」……オレノティムキャンピー。



「アレン」「ティムキャンピー」



フタツガ「奏者ノ資格」



「セシル」モ「奏者ノ資格」



オレノ、オレダケノ「セシル」」








最後の言葉を言い終えると、声は、影は消えた。


次に聞こえたのは大声を出したクロスの声だった。



だけど今の僕には正直どうでもよかった。



アレンがクロスと話し込んでるのを良いことに僕はポソリと呟いた。







『僕は……僕はッ………もう、「君のモノ」じゃないんだよ……!』







それはまるで押し寄せる波のように、いつまでも耳にこびりついた。










「セシルっ、どうします「「アレン」ガ弾ク」







僕に話しかけたのを、またもや別の声に邪魔される。







「どっ、…どうして僕なんだ…!?」








その問いに、ティムは口をヴヴヴヴヴ、と振動させる。







「「アレン」ノ楽譜ダカラ」








やがて、ティムの口からはとても楽譜とは呼びがたい物が映し出された。



アレンは戸惑いながらも、普通の鍵盤とは色が反対なそれを弾き始めた。








『……ど、して…』







外はやはり煩いんだろうか。


だけどこの部屋は静まり返っているから、僕の小さな声はよく響いた。







「そんな……」







チク タク


チク タク









「この紋章……ちがう、

まさか……ちがう…っ、この文字が、どうしてここに…っ!」


「ソレハ唄」







アレンの戸惑いに答えるように、また声が聞こえた。







「旋律ハ……「アレン」ノ、


内………」








―――〜〜♪♪〜♩〜〜〜♩〜〜♪







「手が動く!?


ひ、弾ける?どうして……っ、この詩につく曲なのか!?

読むとメロディが勝手に、頭の中に流れて くる…!」






そう言ったアレンだけど、すぐに片手を額に押し当ててそれを否定した。







「僕の頭の中で歌うのは誰だッ!!?」






『……そっか、…ずっと、』







ずっとそこにいたんだね








僕は穏やかな笑みをアレンに向かって――否、彼の「中」にいるものに微笑みかけるとスゥ…と息を吸ってソッと舌にメロディーをのせた。








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