D.Gray-man

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一度リナリーたちからティキを引き離し、互いに向き直る。


舌なめずりをするティキを見て、これが普段ならここでフザケたこととか言ってただろうな、と苦笑する。





『ティキとまた戦うなんて思わなかったよ…ごめんね、』






ソッと数秒にも満たないそれに僕はティキへの想いを閉じこめると、一気に走り出した。


それに反応してティキもこっちへ向かってくる。






『《彼(か)の武器は私に触れることが出来ない》』






言葉を並べると、ティキの紐のような物は私を避けて瓦礫へと突っ込んでいく。


それにどこからか驚きの声が聞こえた気がした。





「カアァアアア!!!!」

『っ、《目に写る全ての瓦礫は刃へと変わり彼の元へ飛んで行け》!』





言い終えたと同時に一瞬だけ僕の視界に入った瓦礫はふわりと浮き上がり、それはみるみるうちに先の尖った物へと変化する。


ティキの注意を僕に引きつけると、その瓦礫は一斉にティキへと飛んで行った。






「ッッ、ガァアア!!!」






それに貫かれたティキからは悲痛な声が聞こえた。






『ッぅ…、あァア!!!』






身体中に激痛が走り、片膝を着いてしまう。


姫王を体内に含んでいる間――つまり寄生型になっている間の僕は一定時間でしかもたない。


それほどこの状態は複雑で危うい。






『なっ…!待ってティキ!そっちへは行くな!!!』






気付いたのが遅かった。ティキは目に入ったリナリーたちへと走っていく。


チャオジーと呼ばれた男が賢明に瓦礫を支えているところを狙っているみたいで、






『やめっ……リナァァア!!!』






僕の声が聞こえたのか、リナリーはその瞳に涙をいっぱい溜めて僕を見た。


その瞬間、チャオジーの脇から二つ何かがそれを防いだ。






『…ラビ……アレン…』







呆然と名を呟き、僕は痛みに耐えながら勢い良く立った。


彼らは憎むべき対象、だけど…だけど、






『今は共同戦線した方が良さそうだな…!』






ねぇ、ティキ



僕ね、ノアとしての記憶が戻ってきて



良かったよ



それと、一つ謝りたいことがあったんだ





『《イノセンスを持つ者の攻撃力を強化》!!』






それに僕の体内が何かに包まれた。


アレンやラビ、それからリナリーとチャオジーのイノセンスも一瞬光った。



……あのチャオジーって奴もエクソシストだったんだ。






「イノセンスが…」

「強くなったさ…?」

「足が…!」





みんなの声を聞いてよし、と頷くと一瞬にして僕はティキへと詰め寄った。


その側にはアレンが見えた。






『《彼の者の攻撃を5秒無効化》』






ティキの攻撃が目の前に迫ってきていたが、僕の言葉にそれは消えた。


たった5秒、されど5秒なんだ。






『ティキ、一回しか言わないからよく聞いてて』

「セシル…?何を、」






口を耳元へ寄せると、僕はソッと囁いた。






『気持ち悪い、なんて言ってごめんね…。




大好きだよ』







フッと笑うと、僕はドッ!とティキの鳩尾を殴った。







「セシル…」







アレンの私を呼ぶ声が聞こえてきたけど、今はそれに応えれない。


もう体が限界だ。







『ゴホッゴホッ!カハッ……!』







ぴしゃり、と口から血が出てきて地面を赤く染める。


クソ、と思ったのも束の間、ティキがアレンへと向かっていた。







「ここからもう…生きて出られないとしても、命が尽きるまで戦ってやる……っ!」






ギリ、とイノセンスを握りしめる。







「それが、マナとの約束だ……っ!!」








そう言い切った直後、アレンを何かが包んだ。



凄まじい衝撃波のようなそれによって、ティキとアレンは吹き飛ばされる。


……が、アレンは何者かに足を掴まれた。



僕はその人物を視界に捉え、思わず目を見開いてしまった。






「なんだこの汚ねェガキは。


少しは見れるようになったかと思ったが……、いや汚ねェ。

拾った時と変わらんな、馬鹿弟子」






骸骨顔の彼の頭には、アレンのゴーレムであるティムキャンピーが乗っていた。






「これは対アクマ武器、“聖母ノ柩”(グレイヴ・オブ・マリア)……!」

『……まさかのタイミング…、』

「お…おひさし…ぶり…です、」






アレンが途切れ途切れにそう言うと、彼はその骸骨を徐々に消していく。



そうして現れたその顔は、







「なんだその嬉しそうな顔は、




おとそうか?」







アレンの師匠でもあり、僕の師匠でもある





クロス・マリアン元帥だった―――







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