D.Gray-man

□10
1ページ/3ページ




2人の戦いが始まってから、何故か姫王が疼く。その原因を探るために、僕は一人異空間に閉じこもる。






『……姫王、どうしたの』

《…我らは哀しいのだ》

『………どしてさ、』

《主が本心を出せる場所が無くなったことが》

『…そう、』

《我らは主の想いに従うのみ。その主の想いが不安定すぎる故、我らもまた歪む》






…そう、本当にその通りなんだ。イノセンスである姫王は、僕の意志のみに付き従う。


その僕がこんなに不安定なら、当然イノセンスである姫王も不安定になる。






『……分からないんだ、自分が居たい場所が』

《…主、》

『だって、いつも決めてくれてたのは…ネアだったから。





結局、僕はネアがいないと何も出来ない』






ハッ、と自嘲気味に吐き捨てると、姫王は真っ直ぐに佇む。刀なのに、どうしてそんなに強いんだろう。






《主よ、それでいいではないのか》

『………へ、』

《主は14番目を愛していた。されどそれは憎しみへと変わり果てた。ならそれで良い》






姫王の言っていることは、難しくてよく分からない。だけど、







『……僕は僕らしく歩き続ければよかったのか…』

《左様。ノアにつくも、教団につくも、全ては主次第》

『…僕は、教団が嫌いなんだ。エクソシストである自分も嫌い。けど、



ノアは僕のもう一つの家族なんだ。そして兄さんは比べものにならないくらい愛してる』

《……自ずと、答えは見えてくるもの》

『クス……うん、ありがとう…姫王』







僕はゆっくりと姫王の柄を手に取り、ブンと一振りする。そこに、迷いは無い。






『……我が名はセシル・エルウェス、今一度、我に忠誠を誓え』

《我が名は姫王。今一度、主に忠誠を誓う》









その言葉を聞き、僕はズプリと手のひらに姫王を突き刺す。そして、そこから何かが僕の心臓めがけて光る。



やがて、僕の心臓には神田と似ているようで全く似ていない陣が浮かび上がった。







『さあ……行こうか、姫王』








――――僕の家族の加勢に





















「……あっ、セシル!」

『ロード、』

「ふふっ、その様子じゃ…頑張ったみたいだねぇ?


おかえり…」

『……ん、ただいま…』








僕のノアの力、“闇”で自身の足下に闇で足場を作る。ああ、ちなみに言っておくと、僕は闇を自由自在に操れる。






『ティキとアレンは?』

「2人ならぁ、ティッキーがキレたからあの中……」






ロードがそう言い掛けた時、その指差すものがビキッと大きな音を立てて爆発した。






『ちょっ……、』

「危ないなぁ…、何かあったのティッキー?」

「……セシル、帰ってたのか…おかえり」

『あ、うん…ただいま…って、ちがう!』

「ハハッ、わりぃわりぃ。


……ビックリ人間ショー?」

『「は?」』






あのティキが冷や汗を流している。そんなにヤバいのか。






「ビックリしすぎて全然笑えねェっつの」






その時、ピリッと何かを感じた。それはロードもだったようで、






「良くないものを、呼び起こしたか……?」






土煙から出てきたのは、やはりアレンで。その手には千年公と瓜二つの剣が握られている。







『千年公………いや、






ネア…?』







目が、可笑しくなったのだろうか。いつの間にあの剣が出てきたのか。先ほどのティキとの戦いで一体何があったのか。



僕は知らず知らずの内に姫王をギュッと握っていた。






『……ぁ、う……』







しっかりしろ、ネアは憎むべき相手だ。だけどアレンはネアじゃない、分かってるだろ。



深く深呼吸をして、無意識に閉じていた瞳を開けた。





――――だが、視界に飛び込んできたものは、もはや疑いたくなるものだった







『……ティキ…っ!?』







ティキが、アレンに斬られた。








「ティッキィ――――!!?」








だけど、ティキは斬られたにも関わらず少しフラついただけで、血は出ていなかった。







『っ、ティキ、』

「―――…どういうことだ。



死なない……?




………何の幻術ーマネーだ、少年」

「幻術なんかじゃないですよ」







僕が斬ったのは、そうアレンが言い切った瞬間、ティキは血を口から吐き出した。それに伴い、彼の斬られた部分からは聖痕が。







『いやぁぁあ!!!ティキ……!!』

「オレの…内の、ノアが……っ!





あぁぁあああぁぁぁあぁぁあああぁあぁあああぁぁあ!!!!!!!!!」








あの剣は、僕の持っている刀のような役割をしない。



あの剣は、





“退魔の能力”







「人間を生かし、魔だけを滅する。


それが、僕と神ノ道化ークラウン・クラウンーの力……!」








嘘だ、と口だけが動いた。








「視てる?千年公。


あれは――――貴方が悪魔に為損なった彼のピエロだよ」



『っ、や…ティ、』
「あぁぁああぁああああぁぁあああぁぁぁああああああぁぁあぁあぁぁああ!!!!!!!

オレから…ッ、ノアを…奪おうっての…かッ、少…年。


オレを殺さず…に、ノア…だけ?


フハッ、ハハハハハ!!!お前は…甘い…な!

甘いよ、これは…ただのお前のエゴだ…ッ」

「なんとでも。その為の重荷を背負う覚悟はできている」







ティキのノアが危ないと判断したのか、ロードがレロから飛び降りてティキの元へ行こうとする。



――――だけど、それを手で止めたティキ







「いい、」

「!」






その一連の動作に、僕も漸く動き始める。







『ッッ、やだよ…ティキ…!』

「…セシル、」

『ぃやっ…ずっと、一緒だって…言ってくれたのティキじゃない…!』







――――セシル、

――――なーに、ジョイド

――――ずうっと、一緒だ

――――…ホントに?

――――ああ、例えオレが生まれ変わっても、

――――ふふ、…うん

――――愛してる、セシル

――――…私も、愛してる















ティキは此方を見て、小さく微笑んだ。


それにも構わず、アレンは剣を大きく振りかざす。







「この戦争から、




退席しろ、ティキ・ミック!!!」







退魔の剣を、彼は迷わずティキの左胸に突き刺した。






『ティキ……ティキっ!』

「残念だ…少…年、

悪いな、ロード…」






口元に弧を描くティキ。そこは薄く血で汚れている。







『嘘だ、置いてかないで…ティキッッ!!』

「フッ…わりぃ、セシル、




何よりも、愛してる」



『いやあぁぁあ゙ああ゙ぁ゙あ゛あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙ぁあ!!!!!!!』







アレンがティキから剣を引くと、ティキは重力に従うかのようにドサリと倒れた。そして、彼の額にあった聖痕がフッ…と消えた。










.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ