D.Gray-man

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スーマンが、殺された





僕はその事実に呆然と座り込んでいた




目の前に立っている男に攻撃も仕掛けず、ただ静かに








「ノ、…ア」


「おいで、ティーズ」







男の掛け声と共にスーマンの体からたくさんの蝶――――ティーズが溢れ出てきた。




それを見て、僕はピクリと反応する。





たくさんのティーズが男の手のひらに吸い込まれていく。




やがてそれは大きなものへと形を変えた。





ただ、僕はそれを見ていた。




男がアレンと話しているのも。



全てがどうでもよくなっていた。








『……すーま、ん』








僕の小さな小さな声が耳に聞こえたのか、男は僕の方を初めて見た。








「あー…すっかり忘れてた。






久しぶりだな、セシル」








それに反応するアレン。
おそらく“久しぶり”というフレーズに、だろう。








『……久しぶり、ティキ』


「え、ちょっ……どういうことですか、セシル!

このノアと知り合いなんですか!?」


『任務途中で、戦ったことあるから』


「ああ、なるほど……」









納得したアレンは少し肩の力を抜いた。



僕はそこで漸くスーマンから視線を外し、ティキを見上げた。








『…んで、何でスーマンを……!』


「わわっと…んな怒んなって。
仕事なんだからしょーがねぇだろ?」


『っ………ふざけんな!!』








僕は近くまで来ていたティキの顔を思いっきりグーで殴る。



だけどそれは当たることなくただティキの顔を通過した。





それにアレンは息を飲んだ。








「あー、少年。
俺の能力はこれな」








ポリポリと頬を掻いた後、ティキはドッとアレンの胸に手を突き刺した。



だが、またしてもそれは通過してしまう。









「大丈夫、痛みはないよ。

オレが“触れたい”と思うもの以外、オレはすべてを通過するんだ」


『……気味悪い能力』


「そー言うなってー。

…んで、だからもしこの手を抜きながらオレが少年の心臓に触れたいと思えば……。


刃物で体を切り裂かなくても、オレは少年の暖かい心臓を抜き盗れるんだよ」







ティキの瞳が、妖しく細められる。


アレンはだんだんと自分の状況が理解出来ていってるみたい。








「生きたままの心臓盗られるのって……






どんな感じだと思う?」







そう問いかけながらも、ティキはきっと今、アレンの心臓に手を持っていってる。



一度、今のアレンと全く同じ状況になったことがあるから分かる。





…あれは、決して心地のいいものではない。








「少年の仲間もこうして死んでった。


――――少年も、死ぬか?」








僕は最後の言葉に手を姫王まで持って行く。


いつでも、戦闘を開始出来るように。







だけど、それは杞憂に終わった。








アレンはただ真っ直ぐにティキを見つめていたから。








「……シラケるね」







そう言ってティキはパッとアレンの心臓から手を放した。




そしてしばらく話した後、ティキはクルクルとカードを手で回した。







僕はティキから漂ってくる微量の殺気から姫王を抜く。




それと同時にティキは問いかけた。









「少年は、アレン・ウォーカーか?」








その問いかけに答えたのは、僕でも、ましてやアレンでもない。



彼の持っているカードが答えた。






それに確信を持ったティキはグンッとアレンを押し倒し、アレンのイノセンスに手をかけた。





ガシャン、という嫌な音と共にアレンのイノセンスはアレンと繋がってなかった。

















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