学園アリス
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たくさんの笑顔で幕を閉じたバレンタイン。
あれからあたしは、クラスには行っていない。
「やめ、てくれ…ぇ……!」
『……』
「…リスを、アリスを盗るなァアア!!」
苦し紛れに叫ぶ目の前のご老人に、あたしは容赦なく盗みのアリスを発動させる。
これは、柚香先輩がしていたこと。
『……ごめん、なさい…!』
謝るしかできないあたしを、どうか憎んで下さい。
あの日、助けられなかったあたしを許さないで下さい。
「ぁ、……ァあ……」
アリスを盗ると、苦しそうに喘いだ後もうピクリとも動かなくなった。
あたしはそれに目を背けることなくジッと見つめる。
これは、あたしがしたこと。
あたしの背負うべき、罪。
「愛美」
『……校長』
「見事だよ、お疲れ様」
クスリと怪しげに微笑むとちゅ、と頬にキスをされる。それを抵抗もせずに受け、ただその行為が終わるのをジッと待つ。
「あれからもう随分と日が経った」
『……そうですか…』
「クス…外では卒業式が行われているよ…出たいかい?」
『いえ、別に…』
あたしの返事にそうだと思ったよ、と呟く初校長に勝手に眉間に皺が寄っていく。
「さて、ここでの仕事はソイツで終わりだ。
明日からは外での任務をしてもらうから、今日はもう寝なさい」
ガチャリと扉を開けると、あたしの手を取り部屋へ連れて行ってくれる。
寝る場所はもちろんと言うべきか、初校長の部屋なのだが。
部屋へ入ると、そのままベッドへと導かれあたしはそこに横になる。
おやすみなさい、と囁くように言うとああ、と返事をして最後にあたしの顔を見てから書斎へと行った。
その姿を目に焼き付け、あたしはこの疲れや痛みから逃れるように瞳を閉じた。
――――
―――
――
『ゴホッ、ハッ……きつ、』
「良く頑張ったね、愛美。ここのところ毎日任務を詰めていたから少し休むといい。
まずは病院へ行って、体調を整えてから学校へ行きなさい…いいね?」
『っ、……はい』
喉からの嘔吐を飲み込み、初校長の言葉に返事をしてあたしは校長室を出た。
そして初校長に言われた通りに病院へ行き、那月の元へ行くと案の定怒鳴られ強制入院させられた。
――――そうして退院の日
「ん、もう無茶すんなよ」
『ハァ?バカ?それあたしに言わないでくれる?無理に決まってんでしょ』
「テメェ…人が下手に出てりゃあ…!」
『ふーん、っと…那月の戯言に付き合ってる場合じゃなかった。
じゃ、ありがと』
最後にお礼の言葉を口にすると、さっきまで怒っていた那月は目を丸くさせフッと笑った。
それにあたしも真似して笑い、いつものように窓から出ていった。
“あの日”から、あたしと那月は少しだけだけど…お互いに素直になり始めた。
これはある意味成長かな?と自分でそんなことを思い苦笑した。
――――ドンっ!
『った……すみませ…、』
「いい…さて、愛美」
来てくれるかい?
何かを企んでいそうな顔でそう言ったのは、
初校長だった
(どこからどこまでが籠なのか)(小さな彼の手に自身の手を乗せて)(私はケージの中へと戻りゆく)