学園アリス

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みんながあたしを見てくる中、あたしは手のひらにぐっと力を込めた。


しばらくすると、手の中に感じる感触にソッと手のひらを広げた。






『……よし、出来た』

「…う、わあ…!キレーな真っ白のストーンやな!」

「しかもでかいし!すごーい!」

『えへへ、ありがと!』






そう誉められたら照れる。

あたしは少し顔を赤く染めてお礼を言った。




だけどみんなはあたしが出来ると分かって余計にシラケたのかブーブー文句を言っている。


それを見かねた殿内先輩が口火を切った。






「せんせー、折角の合同授業なんでちょっと提案が、」






そんな殿内先輩の提案というのは、







「「「「“闇アリスストーン”?」」」」

「あー、」






その響きに生徒は頭にハテナを浮かべているが、反対に杏樹先輩たちは納得していた。






「あれねー」

「そうそうアレアレ」

「あれかぁ…」

「じゃ、あれでいきましょうか……」

「「「「(何!!?)」」」」







教師陣の“あれ”に不安がるみんな。
もちろんあたしは知ってるしやったこともある。


その時の凄さと言ったらもう…。


あたしは昔を思い出し遠い目をしていた。





すると急に真っ暗になった教室。


ああ、もう始まったのか。


あたしはふぅ、と一つため息を落とすとその場でジッとすることにした。







『…ガヤガヤウルサいなぁ、』







ま、騒ぐのも無理ないか。

それから何分経ったのか、パッと明かりが着く。



その瞬間、誰かに抱きしめられた。







『っ!?』

「……捕まえた」

『なっ、な……』






口をパクパクさせるあたしを見て、“彼”は悪戯に笑った。








『あん、じゅ先輩…!』

「愛美のことだから動かないだろうなって思ってさ」






当たってた、と妖艶に微笑む。

それにあたしはカァ…と頬に熱が溜まるのを感じ、俯いた。


その意図に気づいた先輩はニヤリと口角をあげ、耳元に唇を寄せてきた。






「なに、照れてんの?」

『〜〜〜っ、照れてない!』

「ふ〜ん…?」






先輩は意味ありげにそう言うときゅ、と手に何か握らされた。






『……?』

「俺のアリスストーン。愛美いるでしょ?」

『…くれるんですか?』

「ん、」







そんな先輩にあたしは嬉しくなってあたしも握っていたストーンをあげた。


それに何故か先輩はきょとんとさせた。






「……え、」

『………え、何ですかその顔』

「くれ、んの…?」






意外そうなその顔にあたしはペシンと腕を叩いた。







『当たり前ですよ!と言うかそういう授業でしょう…?』

「や、まあ…そうだけど、」

『??』

「昔した闇アリスストーンで誰も愛美に貰えた人はいないって聞いてたから…」






先輩の言葉にあたしはああ、とそれに納得する。


まあ、あの頃はあたしもひねくれてたからねえ。

仲良いのだって先輩たちとか玲生とかぐらいだったし。



……あ、でも…、







『あたし、玲生にはあげましたよ?』







あたしの言葉に先輩は目を丸くした。







「…ふーん、へー、そう」

『…先輩…?』







先輩は下を向く。

だけど次に何かを思いついたのか、パッと顔を上げてキョロキョロと辺りを見る。






『……先輩?』

「…ん、」







こてり、と首を傾げると先輩の顔が徐々に近づいてきて、気づいたら、








――――ちゅ、







『………ッッ!!???』







キスされました。








「はははっ、おもしれぇ顔!」

『な、にするんですか!』

「え、もっと?」

『〜〜っ、もう知りません!』






あたしはストーンを杏樹先輩に押しつけて早々に教室を出た。


だから先輩が嬉しそうに笑ってたなんて、知らなかった。














『……あ、蜜柑』

「あっ、愛美!」

『これ、あげる』





教室に出る手前、蜜柑と棗を見つける。

その時に蜜柑にストーンをあげる。ついでに棗にも。



その真白のストーンに棗は驚く。…あ、さっきいなかったもんね。






『…それがいつか、二人の力になるように』






にこり、と微笑みあたしは今度こそ教室を出た。









――――



「…この石…」

「どうしたん棗?」

「……何でもねえ」







この石、母さんも同じ物を持ってたなんて言えるかよ…。






「棗」

「あー…、」

「ふふ…この石綺麗やろ?
これなあ…母さんの大事な後輩がくれたやつやねん」

「……う?」

「誰でもホイホイくれるやつじゃないからめっちゃ嬉しくてなあ…。

やからこれだけは棗にあげれへん」

「うー…だっ!」

「あかんあかん!…ま、棗やったらきっと______のことやからくれるわ」

「ゔー…」

「真っ白やろ?これな、_____のアリスだけやねんで、この色」






――――やからな、覚えとき棗



あんたは、沢山の人に愛されてんねんで




もしも棗がほんまに貰えたら、




それはあんたがほんまに使いたい時に使うんやで




それから、これは母ちゃんからのお願いや






「あの子を、______を見といてな



ずっと無茶する子やから、母ちゃんほんまに心配やねん



やから、棗がもし何か思った時はあの子叱ってあげてな」








―――頼むで、棗







「……棗?」

「……るせえよ水玉」






俺は後ろでギャーギャー騒ぐ奴を放っておいて颯爽と教室を出た。




真っ白なアリスストーンを握りしめて。







――――








『ハッ、ハッ……』

「クス…辛いかい?愛美、」

『っく…』

「もう身体はボロボロだろう?」






耳元で囁くようにそう言ってくる――――初校長。


あたしはそれに力の入らない手でパシンと振り払った。



だけど初校長はそれにさえもクスクスと笑うだけ。






『ッッ……』

「この仕事はね、昔あの女がやっていたことだ」

『――――!』






“あの女”


それを指している人は、あたしの思い描いてる人で間違いないだろう。






『これを、あの人にさせてたんですか……!』

「そうだよ」

『こんな、ことを……』







あたしは目先に広がる光景に思わず怒りで声が震える。


それに初校長はクスリと笑ってスルリとあたしの頬を撫でた。







「本当に、私は君が…愛美が好きだよ」






ちゅ、とあたしの項にキスを落としてきた。


それが合図だったかのように、行為は先に進んでいった――。








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