学園アリス

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――――そして、朝がやってきた






「ちがうちがうちがうってばーッッ!

断じてうちじゃないもん!こいつが先にうちにしがみついてきて!!」

「覚えてねえ、寝ぼけてんのか」

「寝ぼけてんのはお前や――――っっ!!」

『むー…朝からうるさーい』






みんながいるところに行けば、朝からギャーギャー騒いでる蜜柑が。


それに軽く文句を言って、欠伸を一つした。






「愛美ちゃん、おはよー」

『おはよ、心読みくん』

「愛美ー!!」

『はいはい、おはよー蜜柑。ほら、姫さまから贈り物だよ』






ピッと指させば、そこにみんなの視線が行く。そして、一目見て誰もが感嘆の声をあげた。






「おお…すごい……振り袖ー…」

「何々?

[この振り袖を来て、ぜひ本日の新年会においで下さいませ。


なお、昨日お受けした“事情”については、特例ということで同行の方々の参加も許可する事に致します。




ただし、“女子”として]?」







……だいぶ妥協したんだな、姫さま。







『さて、……着替えますか』

















――――



「6人共―――、そろそろ出掛ける時間だよー」

「はーい……お…お待たせ――――」






蜜柑と蛍はもう済んだみたいだ。あたしはあと帯を結ぶだけ。







「わー!すごい2人ともっっ!」







蜜柑率いるみんなの声に、後の2人も出来たんだと悟る。残るはあたし一人。



キュ、と最後に結び、やっと着替えが出来た。そして視線をあげて、姿見で完成した自身の姿を見やる。


うん、と小さく頷いてから、あたしも公の場に姿を現した。







『……――――お待たせ、』

「もー!愛美おそ…い、」

『ごめんって、時間かかった』

「い、いや……」

『?どした蜜柑?』

「……愛美……綺麗、」

『ほんと?ありがと』







蜜柑の純粋な言葉に自然と頬が緩む。




そして、あたしたちは車で花姫殿に向かうことに。







「――――そうそう、中等部ーむこうーに着く前に、愛美ちゃんを除いた緊張感の足りない君たちに一つ言っておく事があったんだ」

「んにゃ?」

「中等部校長は何と言うか……変じ…気分屋と言うか…」







今確実に“変人”って言おうとしてた!……まあ、否定は出来ないけどね。



みんなは杏樹先輩の説明に、真面目に耳を傾ける。


……ま、確かに聞いておいた方が身のためだよね。







「みんな、分かったかなー?」

「はーい」







はあ、姫さまじゃないけど…ホント、




憂鬱だ――――













「憂鬱だこと……。男の子だなんて…。


男は嫌いよ、私の花園を土足で踏み荒らしてしまう生き物だわ」

「では姫宮さま、噂は本当ですの?」

「今年の新年会、あの“黒猫”が出席するという話……」

「それ以外に他にも男の子が2人もついてくるとか、」

「仮面の君がおいでになると、本当にろくな事がない…」

「姫さまおかわいそう……」

「あら、そう言えば今年はあの“青薔薇の君”がご出席なさるらしいですわよ?」

「まあ…!あの青薔薇の君に会えるんですの?」

「ええ…姫さまも心なしか嬉しそうでございません?」

「本当に…」






「……青薔薇が来るのは本当に久しゅうこと……。





何か…この憂さを晴らす、青薔薇以外に新たな趣向はないかしら」






















「――――着いたよ。

ここが中等部校長の居であって、今日の新年会の会場でもある“花姫殿”だよー♡」






あー、ついに来ちゃったー。
蜜柑はこの美しさと大きさにテンションマックスだ。







「今井蛍さんと佐倉蜜柑さん、そして雪峪愛美さん。その同行者の方々ですね。



ようこそおいで下さいました」







あたしたちの前に現れたのは、技術系総代表。








「ここより先は私が案内させて頂きます。先生方、ここまでのつきそいご苦労様でした」






さすが、とても綺麗……。







「花園会にて、筆頭花姫のお役に就かせてもらってます。

“かきつばた”こと高等部三年の山之内 静音でございます。本日はどうぞ宜しくお願いします」






この人が今の筆頭花姫なんだ。ふむ、とあたしが一人頷いていると、棗たちは若干引き気味だ。




そして蛍との挨拶を済ませると、今度は棗に向き直った。







「……ごきげんよう」

「…フン、」






あ、そうか。2人ともプリンシパルで知り合いなのか。






「こんな所へあなたがいらっしゃるなんて珍しいこと。


わざわざ姫さまの不興を買ってまで、いつもこういう場を避けてまわってるあなたが、どういう風の吹き回しかしら……「うるせえ」







瞬間、カシャ、と言う音が聞こえた。


え、といつの間にか俯かせていた顔をあげると、なんとカメラで棗を撮ったみたいだ。



……なんて人だ。こんな人が秀ちゃんたちと同じプリンシパル…。



山之内先輩を見て呆けていると、パッとあたしを見た。






「……雪峪さん、」

『…………ハァ、』

「お分かりで何よりです。私も会えて感激しております」

『そんな凄いものじゃないんだけど…』

「クス……あなたが思っているよりも、花姫たちは舞い上がっておりますよ」

『……そうですか。じゃああたしは先に失礼しますね』







ペコリと頭を下げて、先に足を進めた。






「えっ、愛美どこ行くん!??」

『んー…、まあ、ね。


だーいじょーぶ、また後で会えるから
さ』






不安げに眉を垂らしている蜜柑にフッと笑い、目を蛍に移す。


パチリとお互いの目が合う。






「……迷子にならないようにね」

『大丈夫だし!』







べ、と舌を出して、再度蛍を見てからあたしはまた歩き出した。
















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