The philosopher's stone

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――――ハーマイオニーを追いかけたのはいい、けど…








『どこに行ったのかまったく分からない……』







あーもー!と自分に怒っていると、前からパーバティとラベンダーが歩いてきた。


ちょうど良かった、と安堵を零しハーマイオニーがどこに行ったかを問う。



すると、「トイレで泣いてたわよ?泣きながら」と答えてくれた。


それに軽く礼を言い、私はすぐにそのトイレへと向かった。


















トイレにやっと着いた。
中に入ると一つだけ扉が閉まっている個室がある。


そこにいるなと確信した私はその扉に向かって明るく紡いだ。








『ハーマイオニーっ』

「っ、!!……何の用なの、シアン」

『んー?何って…ハーマイオニーに言いたいことがあったの!』

「な、何も今じゃなくていいでしょう?
お願いだから放っておい『trick or treat!!』







ハーマイオニーの台詞をワザと遮りハロウィンお決まりの言葉を口にする。


そして、しばしの沈黙がトイレに流れた。







「お、お菓子なら後であげるわ…だからっ、今はどこかへ行って!」

『え、今くれないなら悪戯しちゃうよ?』

「っ……もういい加減にして!!」







ついに怒鳴ったハーマイオニーに耳を傾けて彼女の想いを聞く。








「わ、私はっ……分かって、るわっ!!

ヒック……ふ、ぅう……だ、誰も、友達がいない、っことくらい!!」







更に泣いてしまったハーマイオニーに少し罪悪感を感じてしまう。



……だけど、今は聞かなければならない時だ。

弁解は後でも…ましてやまた先程と同じようにハーマイオニーの台詞を遮ってすれば事は早く済む。




……だけど、それじゃあ意味がない。








「ズッ……ヒック…おね、がいよ…もう、もう私に構わないで……!」









最後にそう行ってからはもう何も話さなくなったハーマイオニーに、私は漸く口を開く。








『――――言いたいことはそれだけ?』

「――――っ!?」








私の返事が予想外だったのか、微かに息を呑んだ声が聞こえた。



それを気にも止めずに更に言葉を続けていく。








『ハーマイオニーの言いたいことは、分かりやすくまとめたら“友達じゃないから関わらないで”ってかとでしょ?』

「わっ、分かってるなら、早く『だったら私がここにいても全然問題ないじゃん』








本日二度目の遮りにも気づかないくらいハーマイオニーは混乱している。







『だってさ、私たち――――
















“親友”じゃないの?』




「――――ッッ、!!」








刹那、ドアがバタンと音を立てて開き瞬きをした瞬間私は暖かいモノに包まれた。




それがハーマイオニーだということに気づくのにはさほど時間はかからなかった。








「ご、ごめっ……ごめんなさい、シアン…!」

『ふふ、謝られたくないなぁ』

「っ、………ありがとう、」

『………どういたしまして、ハーマイオニー』








にへ、と頬を緩ませたのも束の間。



何かとてつもなく臭い匂いが鼻孔を刺激した。




パッと後ろを振り向いた瞬間――――そこにはここにいるはずのない怪物、トロールがいた。




トロールは私たちを見つけると、すぐさま手にしている巨大な棍棒で殴りかかってきた。




私はとっさに固まって動かなくなったハーマイオニーに多い被さる。






――――バキッ!!!






『っうあ………!』

「……シアン?シアン!??」

『…っだい、じょぶだよ……』








背中が焼けるように痛むも、ハーマイオニーを安心させるためさっきと同じように微笑んだ。







『(このまま殺ってもいいのか…だけどハーマイオニーの前で一年生では習わない呪文を使ったらそれこそ怪しまれる…)

しょーがない、ここは大目に見てよね……』








そのままハーマイオニーを後ろから覆い被さり、ハーマイオニーには見えないようにする。



そして杖を手に取り、素早くかつ小さくそれを振る。




するとトロールはズゥ…ンと軽く倒れるもまたすぐに起きあがってきた。








『くそっ…!(やっぱりそんじょそこらの呪文じゃ効かないか…!)』








どうするべきか、と試行錯誤を続けていると、声が鼓膜を震わせた。








「こっちに引きつけろ!」







ハリーのその言葉に、ロンは蛇口を拾って力いっぱい壁に投げつけた。



トロールは視点を私たちからハリーへと変えた。


そして、今度はハリー目掛けて棍棒を振り上げながら近づいていく。








「やーい、ウスノロ!」







ロンが反対側から叫び、次は金属パイプを投げつける。


その一瞬の隙に、私はハーマイオニーをグイッと引っ張り無理矢理立たせて私の後ろへと回した。








「――――あぁ、あなた…シアン…!背中が……!」

『平気だってば、だからちょっと大人しくしててね』








私は右手で杖を握りしめ、真っ直ぐトロールを見据え唱えた。








『インカーセラス!!』








その呪文とともにトロールに襲いかかったのは炎。

それを呆然と見つめているロンに叱咤する。







『ロン!あなたは魔法使いでしょ!?
杖があるなら魔法を使え!!』








叫ぶ私にハッとした後、ロンは杖を取り出しおもむろに唱えていた。








「ウィンガーディアム レビオーサ!」








突然、棍棒がトロールの手から飛び出して空中を高々と上がり、ゆっくりと一回転してからボクッと痛そうな音を立ててトロールの頭の上に落ちた。





トロールはその衝撃にドサッと倒れてしまった。








「……これ…死んだの?」

「いや、ノックアウトされただけだと思う」






ハリーは屈み込み、いつの間にそのような行動をしたのか、トロールの鼻からハリー自身のだろう杖を引っ張り出した。







「ウエー、トロールの鼻くそだ」

『きたな……』








ベトベトのそれに私はすぐに視線を外した。












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