学園アリス

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そんなあたしを見て、二人は驚く。
実際あたしもビックリしている。



だって、泣くのなんてひさびさだったから。








「せん、ぱ…」


『っ、う、〜〜〜っ…』


「……溜め込みすぎですよ、先輩」


「たまには甘えてくれてもいいんじゃないんですか?」


『ふぇっ…ごめ、』


「ふふ、ここまで弱った先輩見るのもひさびさだ」







そしてしばらくしてからあたしは要約泣きやんだ。



そのタイミングを図ってたみたいに殿内先輩は口を開いた。








「…なあ、さっきから何で今井達は愛美の事を先輩って呼んでんだ?」


「「『…………』」」








それに沈黙するあたしたち。

まるで便乗するかのように蜜柑も話し出す。








「ほんまやほんまや!! どういうことなん!?」


「……どうしましょうか、」


「…忘れてましたね、先輩」


『…ハァ、しょーがない。
アリス使うか……』









あたしは右手をかざすと全能のアリスを発動させた。



使うアリスは“記憶操作のアリス”。









『…上手くいったかな』








しばらく様子を見ていると、一瞬の沈黙。


それから何かに弾かれたように首を傾げだした。








「あれ、俺今何聞いたんだっけ?」


『(成功したか…)殿内先輩、もうボケが始まりましたか』


「そこまでオジサンじゃねーよ!!」













それからなんやかんやして、穴について白状した秀ちゃん。



月が出ている真夜中。




廊下には月の明かりが差し込めていて一層夜を目立たせていた。








「……聞きたいことがある。
穴はどこに通じている?」


「……どこにでも」


「え…」









殿内先輩の問いにスラスラと答える秀ちゃん。



それから殿内先輩は秀ちゃん達の正体を聞いたけど、昴ちゃんが聞かない約束というのを口に出すと大人しく黙った。









「ほら、まもなく到着だ」









その声と共に見入った部屋には“第一音楽室”というプレートが掛かっていた。





それに翼先輩達は驚いている。




あたしは蘇ってくる記憶に頭を預けていた。









「……愛美、あたし…」

『ふふ、たいじょーぶですよ柚香先輩っ!

これさえ作れれば、柚香先輩は自由になれるんですよね?』

「……ええ、でも『だったら、あたしも出来る限りの事は協力しますから!』

「っ…ありがと、愛美…!」

『へへー、お返しはホワロンがいーですっ!』

「クスッ…愛美ったら…」

『…もし、この“穴”が出来て、それを柚香先輩が使って外の世界にアナタが行ってしまっても、あたし、必ず柚香先輩に会いに行きますから』

















――――ええ、待ってるわ…愛美…


















「……先輩、先輩!!」


『ふぇあ!!…あ、秀ちゃん…』


「っ急いで下さい!!」


『!! っごめん!






行ってきます!!』








ここに必ず帰ってくるから、



だから、





帰ってきたときは、お帰りって言ってね?









「愛美先輩、これをっ!!」


『っこれ、昴ちゃんの「きっとお役に立てるはずです!!」








ギュッと握り締められた手の中にあるモノ。



それを離すまいと再度自分でも握りしめ直した。









『ありがと、昴ちゃん!!
秀ちゃん、杏樹先輩には気をつけて!!

初校長にも、細心の注意を払ってね!』


「「はいっ!!」」









二人の真剣な返事を最後に、あたしの視界は穴に吸い込まれていった。





















(ねえ、覚えてる?)(約束、果たしに行きますよ)
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