学園アリス

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「すげーな、お前」








殿内先輩が関心したようにポンポンと頭を撫でた。


…最近あたし撫でられるの多くない?と思ったけど嫌いじゃないからそのまま。




チラリと翼先輩を見てみると、何か思い悩んだ顔をしている。




……何にそんなに思い詰めてるんだろう?








『…翼先輩?』


「……なあ愛美、約束してくれ」


『…何をですか?』


「……この事件が終わったら、愛美の事について教えてくれ」


『……!! …それが例え後悔しても?』


「ああ」









真っ直ぐに見つめてくる翼先輩に、あたしは不覚にも心にグッときた。



まだ、学園にはこんなにも真っ直ぐな瞳を持った人がいる。





――――やっぱり、あたしの選択は間違ってなかった。





この時、あたしはやっと確信した。








『…わかりました。 Zの件が終わり次第、お教えします。

ですが、翼先輩の望むようなモノじゃないですけど…』


「いーって!! ありがとな、愛美!」


『いえ、こちらこそ』


「……俺も、教えてくれ」


『…わかりました』









そんな事をしていると、遠くから足音が聞こえてきた。




どうやらそれは棗、流架、蜜柑なようだ。





まだあたしには気づいていないようで話を進めてる。



そこでやっと蜜柑があたしに気づいたようで、








「っ何であんたがここにおるんよ!」


『……別に、関係ない』


「〜〜っ行かへんのとちゃうん!?」


『だから、あんたには関係ないっつってんの』








喚く蜜柑に対し、冷静なあたし。

先程とは違うあたしに殿内先輩と翼先輩は多少驚いてるみたいだ。









『……じゃ、あたしは行きますね。
まあ精々危ない橋渡れば?


そこであんたが死のうとあたしには一切関係ないしね』









そしてあたしは歩み出した。

高等部の門に向かって。









「おい、お前…ンな格好で何で堂々と入るんだよ」


『あたしはここに入る理由があるの』








後ろから聞こえてきた棗の声に返すと、今度こそあたしは門をくぐった。








―――――――


『うはー、ジロジロ見られてるー』









ていうか高等部の生徒にもあたしのこと知ってる人…いるんじゃない?


だって現に秀ちゃんと昴ちゃん知ってるし。




なんて思いながら前に進んでると、









「……愛美先輩?」








と、あたしを呼ぶ声が聞こえた。



後ろから聞こえたその声にあたしは振り向くと、懐かしい顔ぶれが揃っていた。








『……ありゃま、みんな』


「っやっぱり……先輩!!」


「愛美!!!」








そう言ってわらわらと集まりだした。


みんな、私が高等部に居たときまだ初等部だった子たちだ。





…背、高くなったなあ…。









「本物だ、本物の愛美先輩だ――――!」


『……本物、だよ』


「うあーん!! 会いたかったよ…せんぱーい!」


『…うん、ごめんね』


「先輩が脱走したって聞いて、辛かったんですからーっっ!!!」


『……そっか、ごめん』


「また、また会えるなんて嬉しいですー!!

大好きです、愛美先輩!!」









最後の言葉にあたしは一瞬目を見張るけど、それに応えるようにふわりと笑った。








『……うん、あたしもみんなのこと大好きだよ。

みんなの事を考えなかった日なんて、一日もなかった』








だから、ありがとうと口にすると、みんなもありがとうと口々に言ってくれた。




やっぱり、会えてよかった。






みんな、変わってなくてよかった。






――――こんなどうしようもないあたしを待っててくれて、ありがとう。










――――


「……何だあれ」


「愛美と…高等部の奴らじゃねーか?」


「何であんなに囲まれてんだ?」


「つーかあそこにいるの、全員幼等部から学園にいる奴じゃね?」


「何で…泣いてんの?」


「…さあ?」


「微かに聞こえてくる声は全部愛美に対して敬語だよな?」


「……どーいうことだ?」








side end


―――――――




















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