学園アリス

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「ほら、もう少しこっちにおいで」

『………はい、』









――――初校長
















本来ならばクリスマスパーティーの準備に蜜柑たちと行くはずが、急に初校長に呼び出されて行けなくなった。




それに罪悪感が募りながらもこうして彼の言いなりになる。








『……どうして、』

「ん?」

『どうして、あたしにこんなことするんですか』







どうして、こんなに優しくするんですか



彼の腕の中で疑問を口にする。

すると彼はそんなことか、と薄く笑った。







「そんなの、愛美が大切だからに決まってるだろう?」

『……嘘、ですよね』

「なぜそう思うんだい?」

『だって、貴方はいつも柚香先輩を……』








そこから先は、言うことが出来なかった。


強い力で顔を上に向かされ、深いキスをしてきたからだ。




呆気になっていたが、すぐにあたしはグイッと初校長の胸を押した。


それは思っていたよりも簡単に離れた。







『っ、はぁっ……はっ…何、するんですか』

「クス…愛美があまりにも可笑しなことを言うからね」








愉快そうに細められた瞳からは、いつもの冷酷で恐い印象はない。


むしろ、本当にあたしのことを大事に思っているような感情が含まれている気がしてならない。










――――あれから何分たっただろうか




気が付いたらあたしはベッドで寝かされていた。



起き上がりキョロキョロと辺りを見渡すも、あの小さな姿は見あたらない。




少し首を傾げながらもベッドから降りて足音も立てずに歩き回る。



すると、彼の机の上に見つけたのは一切れの紙。







その紙にはおそらく初校長の伝言であろう彼らしい達筆な字であたし宛に書かれていた。








『……ほんと、』








どちらが貴方の“本当”なんですか









あたしはその紙を手に取り、誰もいない校長室から静かに出た。

















《身体を冷やして風邪を拗ーコジーらせないように。

今日はせっかくのパーティーの準備なのに私の用事に付き合わせて悪かった》


















(どちらも本当の貴方なら)(先生、どうしたら良いんですか)
 

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