05/18の日記

20:27
「ポチ拾いました」のコーラSS追加
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今話題のあのコーラにちなんで、『ポチ拾いました』のSSを書きました。

……これで4つ目ですよ。
いったい何個増殖するのでしょうか(笑)

なお、SSの内容はフィクションであり、実在の商品、団体などとは無関係です(笑)


<コーラを買ってきただけで>

「ポチ、すごいの見つけた!」
 夜のとばりの中にひっそりとたたずむ、明かりのついた小さなアパート。
 水月がドアを開けると案の定、天井に頭が突きそうなほど上背のある二乃島がどーんと玄関に突っ立っていた。
 端正な顔つきだけど、普段はあまり表情がなく、隙がない。
 そんな男に玄関先で待ち伏せされれば、知らない人ならぎょっとするところだろう。この無表情に見下ろしている状態で、実はしっぽを振っているのだと気づく人間は多分水月だけである。
 そんなポチが「お帰りなさいませ」と言う前に、水月は今しがた買ってきたものをビニール袋から鞘を抜き払うように取り出した。
「これ見てこれ!」
「……コーラ、ですか?」
「なんだけど、ただのコーラじゃないんだ。ほらこのマーク」
 水月はペットボトルを二乃島に渡すと、靴を脱ぐのももどかしく玄関に上がった。
「特保って知ってる? 健康に有益な効果があるって国が認めた食品……だったかな。そんな感じのやつ」
「知っています」
「そのマーク。すごいだろ、コーラなのに健康って」
 二乃島は手の中の黒っぽい飲料をじっと見据えて、一言。
「健康に悪そうな色をしています」
「でも健康なんだって。これ飲んだら脂肪の吸収が抑えられるんだぞ」
「脂肪?」
 水月の真っ平らな腹を見て、どこにそんな必要が? という顔をされるが、体型維持に慢心は禁物なのだ。
 今も武道という運動が生活に組み込まれている二乃島と違い、運動の習慣のない人間にはこういうものが頼みの綱だ。昔は細かったのに今は……という事例は身近で何人も知っている。
「とにかく、問題は味だよな」
 水月はコーラを二乃島から取り戻し、キャップをくるっと開けてラッパ飲みした。
 シュワッと広がる炭酸の刺激。
 甘さがケミカルだけど、ちゃんとコーラの味がする。
「おいしい! これいける。ポチも飲んでみなよ」
 渡されて二乃島も口飲みするが、微妙な顔でまた一言。
「健康に悪そうな味がします」
「だから大丈夫なんだってば」
 そう言われて、ポチは味に集中するように目を閉じるが、だんだん眉根が寄っていくのがおかしくて、かわいい。
「お気に召さなかった?」
「……大量に飲むことはおすすめできません」
「そんな飲まないよ。大量になんて」
 ポチは心配性である。どうも納得いかなそうにしげしげと黒いパッケージを見ている。
「健康にいい飲料なら他にいくらでもあると思うのですが」
「だから、それがコーラ味で実現したってのがすごいんじゃないか」
 どうやら二乃島にとって、この画期的コーラに見いだすものは何もなかったらしい。
 まぁポチは普段からジュース類を飲まないから、予想通りの反応なんだけど。
 一緒に暮らし始めてわかってきたのは、二乃島とは価値観も関心を持つ分野もかなり違う、ということだった。だからこんなふうに共感が得られないことの方が多かったりするのだが、それも不思議と楽しめる。
「っていうか、ほんと、合わないよなぁ。いろいろと」
 感慨深く言った後で、はっとした。
 悪い意味で言ったわけではないのだが、今のはちょっと、言葉がまずかった?
 気にするかと思って二乃島を見ると、ポチはちょっと目を瞠って、そして。
 ――夏の夜に舞うホタルのように、ふわりと笑った。
「貴方がいてくれるだけで楽しいです、俺も」
「……っ」
 言葉上は微妙に噛み合っていないのだが、言いたかったことに対する返事は臆面もなくまっすぐに返ってきて、どきりとする。
 しかも、かつて水月が言った言葉での返事ときた。
「……よく、覚えてるな」
「貴方がかけてくださった言葉を、忘れるはずがありません」
「そっ、そう」
 嬉しいけど、こういうのは照れる。
 照れ隠しにペットボトルを取り返して奥の部屋に行こうとしたら、二乃島の腕が引き留めるように絡みついてきて、抱き寄せられる。
「ん……っ」
 押しつけられた唇を受け入れると、するりと舌が侵入してきて、我が物顔で中をかき回す。
 いつもおとなしいポチが、こんな時だけ自分のものだと主張するように水月の体をつかんで、いいように扱う。少し痛いぐらい二乃島の指が背中に食い込むのが、水月には心地よくすら感じる。
 唇が離れると、唾液が糸を引いて透明なアーチを作った。
 じっと注がれる熱い視線。
 それだけで体が内側から熱くなるのを感じながら、水月はぺろりと唇を舐めた。
「コーラ味、だったね」
「……味がついている方がお好みですか?」
 それならキスする前にはこれを飲もうか、と早くも思案顔になっているポチを見て、水月は思わず笑ってしまった。


<おしまい>


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タイトルは「コーラを買ってきただけで(幸せになれる)」というようなニュアンスでつけました。
甘々な(コーラ味の?)水月&ポチです。

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