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□空の写真
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見上げたら、空は燃えていた。
悪魔との戦いが激化する中、夕月は、天白の指示で鎌倉にいた。
戒めの手の源泉である夕月が、悪魔にやられるわけにはいかない。
天白の判断は賢明であり、当然でもあった。
この空が、ルカの見ている空と同じだなんてありえない。
夕方の空は、戦のときの空と似ている。
人も建築物も自然も、何もかもが燃えている、緋色に染まった空に。
「ルカ・・」
離れて、気づく。
キミの存在があるだけで、自分は満たされていたことに。
ルカという存在が、自分を生かしてくれていたのだということに。
「ルカ」
名前を呼んだだけで傍にいてくれた。
今はただ、あの頃が懐かしい。
天白に貰った、デジタルカメラを取り出し、レンズを空に向ける。
幾枚か撮って、画面で写真を確認し、もう一度空を見上げる。
すると。
「あれ・・」
写真の空には、橙色と青色しかない。
けれど、肉眼で見ると、確かにその間に、紫色がある。
紫とは言い難い、複雑な紫色。
「そっか・・」
写真なんかじゃ、届かないんだね。
この紫をキミに見せたいだなんて、自分はこんなにも傲慢な人間だっただろうか。
もう一度、シャッターを押す。
空の写真は、何も伝えてくれない。
◇遠距離ルカ夕月です。