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□髪キス
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ルカが何気なくやっているはずの仕草。
それを、僕はいちいち気に留めてしまう。
これは、僕が恋愛経験がないからなんだろうか。
ただ単に意識しすぎているだけなんだろうか。
普通なら、どんな反応をすればいいんだろう。
普通なら・・
手をつながれても、キスをされても、僕は固まることしかできない。
緊張とは少し違う、甘酸っぱい感情。
それに囚われて、動けなくなる。
ルカ。
名前を口にするだけで、顔が熱くなる。
こんなものなんだろうか、恋って。
*
「ルカ」
部屋を出ると、ルカが壁に寄りかかっていた。
いつからいたんだろうか。
居間で別れたから、大分経ってる。
驚いて名前を呼ぶと、ルカは何も言わずに微笑んでくれる。
僕にだけ見せてくれる、
他の人には決して見せない、
この微笑みを見ただけで胸が高鳴るって言ったら、引かれちゃうかな。
たぶん、好きだったのは最初から。
ちゃんと出会った前からかもしれない。
友達が誰かといても、嫉妬なんて感情が湧いてくることはなかった。
なのに、ルカが傍にいないだけで、ルカのことばかり考えて、気づいたら、自分を嫌いになる程、ルカと共にいたいって思ってしまって・・・
「ユキ」
傍にいるだけで泣きそうなくらい嬉しいのに、名前を呼ばれたら・・
「ユキ・・」
僕は、僕じゃなくなってしまいそうだ。
「・・・」
ルカの顔が近づいてくる。
最近やっと分かってきた。
どういうタイミングでキスをするのか。
僕は黙って目を瞑った。
けど、中々唇に温かみはこない。
「・・・?」
ふわり。
軽く、本当に軽く。
一瞬、何が触れたのか分からなかった。
目を見開くと、ルカの首が目に入った。
前髪に、キスをされたのだ。
「・・ルカ」
どうしよう。
「・・何も言わなくていい」
こっちのキスの方が、ドキドキするなんて・・
◇ほのぼのルカ夕月。